転載元 : http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1502444141/ 1: 名無しさん@おーぷん 2017/08/11(金)18:35:41 ID:jtN 「おはようございます」 丁寧なノックに澄んだ声。 フルートのような優しい音色が、リズミカルな打鍵音で満たされていた事務所を彩る。 目の前の企画書から目を外し、ドアの方に目をやると、水本ゆかりが立っていた。 2: 名無しさん@おーぷん 2017/08/11(金)18:35:53 ID:jtN 「おう、おはよう。……って、ゆかり今日はオフじゃなかったか?」 「はい。そうだったのですが……その、特に用事もありませんでしたので、つい」 荷物をソファに置き、自らも腰を下ろしながら、照れくさそうに微笑む。 仕草の一つ一つに育ちの良さが出る奥ゆかしさは、15歳とは到底思えない。 3: 名無しさん@おーぷん 2017/08/11(金)18:36:04 ID:jtN 「んー……つっても他の奴はレッスンだのなんだので今居ないから、ここに居ても暇だと思うぞ?」 「いえ、ここにいれば退屈ということはないですね。……あ、もしかしてご迷惑でしたか?」 心配そうにこちらを見る。 そんなことはない。むしろ退屈させてしまうのが申し訳ないところだ。 いや、ここにいれば退屈ではないと言うのなら、そうだとは思いたいが。 他に誰かが居たのならそれに越したことはないのだが、帰ってくるのはまだ先の話だ。 4: 名無しさん@おーぷん 2017/08/11(金)18:36:13 ID:jtN 「ゆかりが退屈じゃないってのなら問題ないさ。それに今ちひろさんも居ないし、華が欲しかったところだ」 「そうですか。……ふふっ」 嬉しそうな笑顔。 こういうところは年相応というか、可愛らしい女の子と言うか。 こういうギャップが彼女のいいところだろう。 5: 名無しさん@おーぷん 2017/08/11(金)18:36:20 ID:jtN 「それじゃあ、俺は仕事に戻るから。何かあったら言ってくれ」 「はい。お疲れ様です、プロデューサー」 このままゆかりと話し続けるというのは魅力的だが、やらなくてはいけないことがある以上やらねばなるまい。 視線を作成途中の企画書に戻す。 彩りの増えた打鍵音だけの空間は、なんとなくいつもより作業が捗った。 続きを読む