転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525443266/ 1 : ◆yufVJNsZ3s 2018/05/04(金) 23:14:27.24 ID:tXD6cCGS0 思い付きで書きました。 よって続きません。 2 : ◆yufVJNsZ3s 2018/05/04(金) 23:15:39.66 ID:tXD6cCGS0 イクが大笑いしていた。 イムヤがしかめっ面をしていた。 ゴーヤがきょとんとしていた。 ハチが軽蔑した目をしていた。 「変態なの!」 「……変態」 「変態でちか?」 「変態、です」 「違う! 誤解だ、本当だ、信じてくれ!」 俺は必死で否定をするも、スクール水着を手に持った状態では、何を言っても説得力など皆無だった。 俺の両手には、いま、充分に撥水加工の為された紺色の布が握られていた。古き時代のスクール水着というやつだ。肩や膝まで布の伸びたタイプではなく、脇や太ももが露出するタイプのもの。 なるほど、確かに女性用の――否、女子用のそれを手に、力強く語る男がいたら変態だろう。そしてその男とは俺のことである。即ち俺は変態である。見事な三段論法に不備はない。 ではない。 3 : ◆yufVJNsZ3s 2018/05/04(金) 23:17:41.67 ID:tXD6cCGS0 「いいか? これは単なる水着では、ない!」 先ほどの説明を、今度こそ理解してくれと願いながら、もう一度繰り返す。 「露出した部分には空気の層を多段生成することにより高効率な断熱性を持たせることに成功している。それに伴って耐衝撃性、耐摩耗性も著しく向上した。海の中だけではなく、外でも一貫して着用できる性能になっている。 当然布地の部分も最先端技術が施されていて、微細な繊毛によってミクロの泡を付着させ、あるいは消失させることによって、浮力の助力をこれまで以上に得られやすくしているわけだ。潜航と浮上に必要な時間を八割まで落とせるという試算が出ている。 また新開発の形状記憶素材を各関節部に取り入れることによって、この水着はお前たちの動きの癖を認識し、それをサポートするような形へと変化をしていく。巡航速度も飛躍的に上昇するだろう」 4 : ◆yufVJNsZ3s 2018/05/04(金) 23:18:37.35 ID:tXD6cCGS0 そこまで喋って、ハサミを取り出した。それを水着に当て、二度、刃を進める。 当然水着には大きな切れ込みが入った。 「さらに! ある一定の間隔でナノマシンが縫いこまれていて、仮にこのように破れたとしても!」 切断面を継ぎ合せて一撫ですれば、先ほどの切れ込みは跡形もない。指で触っても、歪な凹凸は感じられなかった。 「修復機構によって一瞬で修繕がなされる、機能美に溢れた最先端の制服、それがこの潜水艦娘専用制服なんだ! これをスク水と呼ぶことは、俺が許さん!」 大上段からの熱の籠った演説。俺の目の前の四人も、思わず手を叩いていた。 「でも教官」 ゴーヤが手を挙げた。 「なんでスク水なんでちか?」 だからスク水ではないと言っているだろうに。 たとえ見てくれがいくらスク水であったとしても、である。 「なんで? なんでって、そりゃ……」 俺は口ごもった。なぜか。その理由を、俺自身がわかっていなかった。 その無言はどうやら四人には決定的だったらしく、各々が視線を巡らせ、頷く。 5 : ◆yufVJNsZ3s 2018/05/04(金) 23:19:31.39 ID:tXD6cCGS0 「変態なの!」 「……変態」 「変態でちか?」 「変態、です」 頭痛がしてきた。全て誤解だったが、誤解を解くような材料は、何一つ俺の手元には残っていない。 新たな艦種として「潜水艦」が徴用されるとなったとき、人員の選定、訓練は勿論だが、その制服についても策定しなければならなかった。俺は計画立案の段階から深く携わっていたから、どのような機能が備わっているべきかについて、考えない理由はどこにもなかった。 戦場において求められる機能は、まず第一に耐衝撃性。汚損にも強くなければならず、海の上ではなく中を往く潜水艦には、隠密性と断熱性も必要だ。 そう言った諸処の要素を取捨選択……するのではなく、予算の関係で「全部載せ」してしまった結果、おおよそ量産には不向きな超絶機構の制服が誕生する運びとなった。シーレーンの確保にどれだけ防衛省が頭を悩ませているのかがわかる予算の使い方だ。 だが、どうしてスクール水着なのかは、まるでわからない。 実戦配備はまだ先の話で、それこそこの四人が結果を出してくれなければ、全てが水の泡。予算をペイするため、俺には何としてでもこの制服を四人に着せる使命があった。 続きを読む