転載元 : http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1537084884/ 1: 名無しさん@おーぷん 2018/09/16(日)17:01:24 ID:HOD どうしてそういう問題が起きるのか。 桃子には、全く分からなかった。 何でそんなに怒声をあげてるの? どうして、2人はケンカしているの? ……今なら、分かる気がする。ううん、分かりきってはいないけど…何となく察する事ならできる。 2人とも桃子の事で、ケンカしてるんだって。 見上げるような形で2人を見る。 表情や言葉までは分からなかったけど、直感で今まさにケンカ中だということは理解できた。 『~…~……!』 『…! ……~…!』 胸の奥がキュッとした。 悲しむ演技はできる。桃子は子役だから。でも、なんだろ。少なくとも今の気持ちは演技なんかじゃない。 …桃子がもっと頑張れば、2人は仲良くなってくれるのかな。 ううん、それはないよね。だって、2人がよくケンカをし始めたのは…桃子が子役になった時からだったから。 桃子が頑張ったところで、どうせ2人の仲は良くならない。 ねぇ…お母さん、お父さん…そうでしょ? 2: 名無しさん@おーぷん 2018/09/16(日)17:02:39 ID:HOD 「…きろ…もも……い…」 誰かの声が耳に入ってくる。それと同時に、軽く体が揺すられる感じがした。 聞き覚えのある、ううん。聞き慣れたこの声は……。 「おい、桃子…起きろ、桃子!」 重かった目を開けると、そこには予想通りの顔があった。 「なに、お兄ちゃん…?」 「桃子こそどうしたんだ、なんだかうなされていたようだったけど…」 …夢だった。でも、今の夢の映像は頭の中にしっかりと覚えている。だって、桃子が実際に目で見た光景だったから。 人って、何で嫌な記憶に限ってこんなに鮮明に覚えちゃってるんだろ。 「…別に。お兄ちゃんの声がうるさくて機嫌が悪くなってただけだから」 「そうか…それなら良かった」 お兄ちゃんに心配されるのも嫌だったから適当に嘘をつく。 生意気な台詞だったと思うけど、お兄ちゃんは気にも留めずに笑みを浮かべた。 3: 名無しさん@おーぷん 2018/09/16(日)17:04:50 ID:HOD 「…そういえば、ここは?」 夢を見ていた事は覚えてる。けど、どのタイミングで寝ちゃったのか、どれくらい時間が経っているのか。そこらへんは覚えてなかった。 「事務所だよ。さっき収録番組があっただろ? その帰りの車で桃子が寝ちゃってたし、無理に起こすのも悪いからここまで連れてきたんだ」 俺はまだ仕事が残っていたからな、と言いながらお兄ちゃんは立ち上がる。 ちょっとずつ思い出してきた。そうだ、桃子…疲れちゃって車に揺すられる内に寝ちゃったんだった。 掛けられていた毛布を片付け、桃子も立ち上がる。 「うし、桃子が寝てる間に俺も仕事終わらしたし、さっさと帰るか」 帰る。当然だけど、自分の家に…。 さっきの夢が頭の中に浮かんでくる。家に帰ったら、また鮮明に思い出しちゃうんだろうなぁ…。 「さ、桃子。行こう」 「やだ」 無意識に口が動いていた。 お兄ちゃんの目が点になっているのがよく分かる。 「な、なんて?」 「やだって言ったの。帰りたくない」 ごめん、桃子だってお兄ちゃんを困らせたくて言ってる訳じゃないんだけど…。 どうしても、今は帰りたくなかった。 続きを読む