転載元 : http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1532185203/ 1: 名無しさん@おーぷん 2018/07/22(日)00:00:05 ID:6O6 アイドルマスターシンデレラガールズです。 佐藤心さんのお話ですが、あまり出てきません。 2: 名無しさん@おーぷん 2018/07/22(日)00:00:31 ID:6O6 容赦という言葉を忘れてしまったかのように照り付ける太陽の下、俺はヘルメットを脱ぎ頭を豪快にタオルで拭った。 「あっちぃ……」 もう何年もこの仕事をしていると言うのに、いつまで経っても夏の暑さに慣れる事は無いようだ。 バイクの後ろに取り付けられた箱から水筒を取り出し、冷たく澄んだ水を一口。汗を拭き、水を一口飲むだけでほんのわずかな間ではあるが暑さを忘れられる。 「……行くか」 これ以上バイクを停めていてはサボっていると勘違いされかねない。 暑さに辟易としながらも、ヘルメットを被り、再びバイクに跨って走り出した。左手には郵便を持って。 「夏になると思い出しちまうな」 もう10年近く前になるだろうか。あの夏、俺は一人の少女と出会った。長い髪のとても綺麗な少女の事を。 3: 名無しさん@おーぷん 2018/07/22(日)00:01:16 ID:6O6 ◆ 「なぁ、お前のとこの配達先にめっちゃ美人が居るんだって?」 「あー。居るらしいっすね。俺はまだ見た事ないんですけど」 俺が郵便局で働きだして間もない頃、やっと配達先を覚えたあたりで同じ班の同僚から美人の噂を聞いた事があった。 「見た事ないのかよ、じゃあどれくらい美人かわかんねぇな」 俺にそう声をかけてきたのは他班の先輩社員だった。彼と俺は歳が近い事もあって、昼休憩にはこういう世田話をしているのだ。 「そっすね。でもみんな美人って言うんでたぶん相当なんじゃないかなって思ってます」 噂なんてものは尾ひれがつくものだから、同じ班の同僚がなんと言おうが実際はそうでもないだろうってのが俺の見立てだ。それでも周りに合わせておくに限る。その方が楽だしな。 「めっちゃ羨ましいわ。俺のとこなんてそもそも若い子が居ねぇし」 「まぁ、田舎っすからねぇ……」 「もし見かけたら絶対に教えろよ。マジで美人だったらメアド聞いといてくれ」 冗談半分、本気半分ってとこだろうか。この仕事をしていると女性との出会いはそうそう無いから彼の言葉は案外本気なのかも知れない。 「うっす。善処します」 「それやんねぇ奴だよな」 「かもしれないっすね」 どうせ彼も俺も昼の配達に出るころには忘れている。確かに配達先で美人を見かけるとその日一日が得した気分になるのは間違いないが、わざわざ探すほど俺達は暇ではない。 顔をあげて壁にかかった時計を見て時間を確認する。昼休憩が残りわずかな事を彼にも伝えると彼は慌てて手にしていたおにぎりを口の中に放り込んでいた。 4: 名無しさん@おーぷん 2018/07/22(日)00:01:37 ID:6O6 ◆ そろそろ配達も終盤、あとはこの通りを配れば郵便局に戻れると言う時だった。とある家の前に人影が、一人の女性が立っているのが遠目に見えたのだ。 遠目からでも女性だとわかったのはその人影が長い髪をしていたからだった。 この時、俺は内心めんどくさいなと思っていた。郵便はポストに入れた方が早いのだが、大事なお客様と顔を合わせたなら名前を確認して手渡ししないと、やれ態度が悪いだのやれ雑だだのとのありがたいお言葉を頂戴するハメになるからだ。 バイクで近づくにつれ、件の女性が思ったよりも若い、というか制服を着ている事から学生さんであることが分かった。そして、この学生さんが同僚が噂していた美人だという事も分かった。 「こんにちはー、郵便局です。佐藤さんでお間違いないですか?」 「はい! 佐藤です!」 彼女はどうやら郵便を待っていたのだろう。俺が来ると彼女は食い気味に手を差し出してきた。 「えっと……今日はこちらですね」 「ありがとうございます!」 なるほど。これは確かにかなりの美人だ。でも、このくらいの歳なら美人よりも美少女だろうか。髪はサラサラのストレートで、顔つきは年相応に可愛らしい。しかもスタイルも抜群だ。これなら遠目からはかなり大人びて見えるだろう。 続きを読む