転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1386498137/ 1: HAM ◆HAM/FeZ/c2 2013/12/08(日) 19:22:17 ID:iYqcwHD2 「手をつなごう」 少女はそう言って、右手を差し出した。 ふんわりと柔らかな髪。 白く透き通るような頬。 青く深く光る瞳。 優雅に差し出されたその右手を、少年は不思議そうに見つめた。 (この子は突然、何を言い出すのだろう) (というか、この子は誰だろう) 少年には、その少女に見覚えがなかった。 こんなに小さな村に、知らない子がいるということが新鮮だった。 2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 19:29:13 ID:iYqcwHD2 少年は興味本位で聞いてみた。 「君、見かけない子だね?」 「……」 「引っ越してきたの? 遊びに来たの?」 「……」 少女は口を開かない。 右手はまだ、優雅に差し出されたままだ。 3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 19:38:09 ID:iYqcwHD2 少年は少し恥ずかしかったが、そのままレディに右手を硬直させていてはいけないと思い、優しく手を握った。 彼女の村では握手があいさつとして主流なのかもしれなかったし、 少年も女の子と手を握ることに特に抵抗がなかった。 「よろしく、僕は……」 少女はにっこりと笑い、少年の目をじっと観察するように見つめた。 少年の右手を握る右手にも、少し力が込められた。 4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 19:56:39 ID:iYqcwHD2 「え、えっと……」 少年は少したじろいだ。 握手なんてものは、きゅっと手を握って終わりだと思っていたし、 たまに熱い握手をする男がいるが、もっとぶんぶん手を振って唾を飛ばすのが普通だ。 少女の握手は、それとは違った。 何と言おうか。 静かで、強い。 そんな握手だった。 少年は頬が紅潮していくのが自分でもわかった。 少女の何らかのエネルギーが、つないだ手を伝って流れ込んできたようだ。 5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 20:07:58 ID:iYqcwHD2 「あーあいつ、オンナと手つないでやがる!」 レディとの高貴な挨拶を台無しにしてくれたのは、村のガキ大将だった。 そして横にはいつものように、チビですばしっこくて抜け目のない、いわゆる金魚の糞が鎮座していた。 「オンナと手ぇつないでるー」 「だっせえ」 「うひゃひゃひゃ」 少年は、先ほどとは違う頬の紅潮を感じ、急いで手を離した。 言い返したかったが、あいつらに逆らったら明日もっとひどい仕返しをされるだけだ。 少年はぐっとこらえた。 それが大人であると自分を錯覚させ、ぐっとこらえた。 続きを読む