転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1534174364/ 1: ◆aS6s1yQvvE 2018/08/14(火) 00:32:44.35 ID:9h5rKYd00 プシュッ トットットッ ゴキュゴキュゴキュ プハー 勇者「いやー、まさに至福ですね。朝から横になって飲むエールというのは」 勇者「一人きりというのがちょっと引っかかりますが……」 勇者「仲間はみんな王都を離れてしまったのだから仕方ありません」 勇者「しかし暇ですね……」 勇者「どれどれ、魔道幻影で学生どもが白球と戯れる姿でも観覧しますかね」 勇者「えーっと、リモコンリモコン……あった」ピッ 2: ◆aS6s1yQvvE 2018/08/14(火) 00:37:19.44 ID:9h5rKYd00 カキーン 勇者「お、打った! けどショートの正面じゃないか。これはアウトですね」 勇者「……っと、どこに送球してんだバカ! あーあー、余裕でセーフだよ」 勇者「しかし、球場は相変わらず快晴で暑そうですね」 勇者「暑い中死闘を演じる愚民どもを涼しいところから野次る……」 勇者「これに勝る娯楽はありませんなあ!」 勇者「……っと、何でバントに失敗してるんだ。だから言ったろう、2回続けてバントしようとしても成功しないって!」 勇者「ったく、マトモな采配もできない奴が監督やってんじゃねーよ」 勇者「ふっ……、まあ、それも良しとしましょう」 勇者「そもそもですが、こんな真夏に激闘を演じたところで、彼らは何も生み出さないのです」 勇者「魔王軍の進軍は止められません。スクリーン上の彼が死に物狂いで白球を投げ切ろうとしているとき、彼の村は魔族の襲撃を受け、彼の母親はバケモノに陵辱されているのかもしれません」 勇者「にもかかわらず、彼らはこの大会に向けて持てる力を出し切るのです」 勇者「ある者は肩を壊し、ある者は肘を壊します」 勇者「この乱世に大切な人を助けるわけでもなく、ただ無意味な死闘を演じて魔族と戦えない体に成り下がるのです」 勇者「こういうあまりにも残念かつ無駄な自爆っぷりを見ていると……」 勇者「心が奥底から躍りだしちゃいますね!」 3: ◆aS6s1yQvvE 2018/08/14(火) 00:39:27.47 ID:9h5rKYd00 プルルルルル・・・ 勇者「っと、誰ですかね。人が心の洗濯をしているときに魔道通話をしようとしているのは」ピッ 勇者「はいもしもし、勇者ですが」 国王「おお、勇者かね」 勇者「ええ、一人暮らしの私のところに掛けているのですから勇者しか出ませんよ」 国王「うむ、休暇中でも朕からの魔道通話にはワンコールで出る心掛け、まずは良しとしよう」 勇者「あー、はい。どうも、です」 国王「久しぶりの休暇だから、てっきりまだ寝ているのかと思ったぞ」 勇者「とんでもありませんよ、陛下」 国王「いや失敬、これは誤解だったようだな」 国王「して、何をしていたのだ?」 勇者「休暇こそ、私が守らんとする民の生活を知るまたとない機会なのです」 国王「ほう……」 勇者「今、懸命に生きる民のひたむきな姿を魔道幻影で拝見し、魔王討伐への思いを新たにしていたところです」 国王「むっ! 見上げた心掛けだ。さすがは勇者!」 続きを読む