転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1389322895/ 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/10(金) 12:01:35 ID:.JhPNqoc 慣れた道、少し飽きた道を、いつもの通り会社へと歩く。 まだ眠気を残していた頭も、一級河川を渡る長い橋の上で寒風に吹かれ、少しずつ覚めてきた。 徒歩や自転車、それぞれのスピードで橋上の歩道を渡りゆく人々。 朝のラッシュに連なり、歩くよりも遅く停滞した車道。 この橋は住宅やマンションが多く建つエリアと市街地を結ぶ、渋滞の名所だ。 川面を見下ろすと冷たそうな水が透き通って、底のごろた石の模様がよく見える。 測った事は無いけれど、たぶん三分ほどの時間をかけて橋を渡りきり、僕はいつも通りその袂を右へと折れた。 そこからは舗装もされていない土道、周りには樹木が生い茂った川沿いの遊歩道となっている。 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/10(金) 12:02:24 ID:.JhPNqoc 市街地に近い場所に、不釣り合いに残された緑豊かなエリア。 それが保持された理由は、この雑木林の向こうにある。 そこには築庭から三百年を数える、由緒正しき大庭園が広がっているのだ。 この地の殿様が城下に造らせた広大な庭で、今は自治体による運営管理の下、観光地としても有用な施設となっている。 その外周を巡るこの遊歩道は通勤や通学のルートとして、また朝の散歩道としても多くの人に利用されていた。 車がいないから比較的安全な、街までの近道。 それもこの道が多くの人に利用される要因のひとつではあるが、何よりもこの趣が心地よいというのが一番の理由だろう。 朝夕、少なからず憂鬱な職場と心休まる自宅との行き来にここを通る事によって、気分は大いにリフレッシュされていると思う。 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/10(金) 12:03:02 ID:.JhPNqoc 林の向こうの庭園は、数キロ離れたところに横たわる低い山々を借景としているそうで、その障害とならないよう近隣は建物の高さが制限されているらしい。 それ故に遊歩道からも人工的な建造物はあまり目につかず、里山を散策しているかのような気分に浸る事ができる。 木立越しに川面を望む側に設置された人止め柵も、丸太を型取ったコンクリート製の擬木で作られており、人工的ではあるが景観を損なうほどではない。 僅かずつでも日々変わりゆく景色を眺めつつ、今朝もその小径をゆっくりと歩いていた。 続きを読む