転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531747184/ 1 : ◆TOYOUsnVr. 2018/07/16(月) 22:19:45.05 ID:/aS1s4K/0 撮影を終えて楽屋に戻ると、どっと疲れが押し寄せた。 様々な服をとっかえひっかえして、ポージングをして、と撮影のお仕事は未だに慣れない。 もちろん、撮られる側としての技能自体はそれなりに上がってきているとは思うけれど、やはりこれは性格的な問題なのだろう。 脳が糖分を欲している。 そして飛び込んでくる、目の前の机上に並んでいる色とりどりのお菓子とコーヒーポット。 この誘惑には抗えそうにないが、その気持ちをぐっとこらえ、まずは着替えに専念することにした。 2 : ◆TOYOUsnVr. 2018/07/16(月) 22:20:23.59 ID:/aS1s4K/0 ○ 私服へと着替え、いざコーヒーブレイク。 意気込んで椅子へ座ったところ、鞄の中の携帯電話が私を呼んだ。 間が悪い。 鞄から携帯電話を引き抜いて、通知を確認した。 メールだった。 送り主は私のプロデューサーからで、無題。 本文の内容は『お迎えいる?』という簡素なものだった。 簡素なものだったが、その簡素なたった数文字に嬉しくなっている、させられてしまっている私なのだった。 3 : ◆TOYOUsnVr. 2018/07/16(月) 22:23:15.24 ID:/aS1s4K/0 ○ いらないわけないでしょ。 心の中で呟いてメールアプリを落とし、次いで電話帳を開く。 その最上段に設定してあるプロデューサーの名前を通り過ぎ、二番目の家の固定電話へと発信した。 一度のコールの後にすぐに電話は取られ、母の軽快な声が響く。 『お電話ありがとうございます。フラワーショップ渋谷でございます』 それに対して「私だけど」と返す。 すると、母の声はワントーン落ちた。 「ご飯ってもう作っちゃった?」 『まだよー。お父さんが配達から帰ってきたら作ろうかと思ってて』 「あ、よかった」 『ご飯、食べてくるのね』 「うん」 『あ、お客さん来たから……またね。行ってらっしゃい』 「あ、ごめん。うん。行ってきます」 今日忙しかったのかな。 通話が切れたことを示す電子音を吐くのみとなった携帯電話を降ろし、手伝いができないことを申し訳なく思った。 しかし、こんなことを言うと決まって母は「凛が生まれる前は二人だったし、生まれてからしばらくは育児もしながらだったから、今なんてぬるいくらいよ」と小突いてくるのだった。 続きを読む