転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529596477/ 1: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/22(金) 00:54:37.62 ID:wWXdAL2J0 彼の人生の終末にエンドロールがあったら、私はどんなふうに書かれているんだろう。 2: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/22(金) 01:13:16.37 ID:wWXdAL2J0 せめて名前だけでも、ちゃんと書いてあったら嬉しい。 4: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/22(金) 21:13:42.19 ID:wWXdAL2J0 大人びている。よく、そう言われる女子高校生だった。両親も、よくそう褒めた。 私はそれに喜んだり悲しんだり、深く考えたりしたくなかった。だって、“奏は大人びている”。そう言っている人達も、言葉の意味を考えたりしないのに、どうして私がいちいち頭や心をかき乱されないといけないのかしら。そうでしょう? 現実として、私は父親のお金で高校に通ったり映画を借りたりしている。母親にご飯をつくってもらったり、時々は髪を梳かしてもらったり、リップを選んでもらったりする。レイトショーにもこっそり行かなくちゃいけないし、ティーン向けの恋愛映画に無闇に心をかき乱されるのがいやで、遠ざけたりする。 そういうことを私は隠したりせず、きちんと話しているのに。本当は、みんな私のことをよく考えたりするのが面倒で、“大人”というレッテルを貼って、やりすごそうとしているのかしら。 5: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/22(金) 21:14:57.52 ID:wWXdAL2J0 そんなふうに、すっかり物憂げな顔をして街を歩くのが趣味になっていたとき、声をかけてくれたのがプロデューサーさんだった。 「君、ちょっといいかな」 本当に“ちょっと”ならかまわないわ。いつものナンパだと思って、返事をしたような気がする。彼はしばらく考え込んで、多分その間に“ちょっと”の時間は過ぎてしまったんだけど、私は彼の言葉を待った。 父親、教師、学校の先輩、同級生、後輩……私の言葉にうなずくだけで、耳を貸そうとはしないひととはちがって、彼は、私の何気ない一言も真剣に受け取って悩んだり、傷ついたりしてくれるひとかもしれない。そう思ったから。 6: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/22(金) 21:15:45.41 ID:wWXdAL2J0 「君の人生をちょっとだけ、ぼくに預けてみないか」 渡された名刺には美城プロダクションと書かれていて、私は自分がスカウトされていることに気づいた。 「“ぼく”、本気?」 小さな男の子をからかうみたいに、私は下唇をつきだした。彼は、行儀が悪くて家の外にだされた子犬みたいな顔になった。 私はその反応がおもしろくて、言葉をつづけた。 「そうねぇ…じゃあ…今、キスしてくれたらなってもいいよ」 彼はチェリー・キャンディみたいに真っ赤になって、うつむいてしまった。 私より9、10歳くらい年上の若い男。自分だってまだ若いくせに、“若者”に説教をしはじめるような歳の男。 そういう男を、17の私が翻弄している。私はそれが無邪気に楽しくて、アイドルになることを受け入れた。 続きを読む