転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528994465/ 1: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/15(金) 01:41:05.95 ID:qFXEoNRp0 ・オリジナルで書いてみました ・みじかいです 2: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/15(金) 01:42:21.50 ID:qFXEoNRp0 旅人がその村に着いたのは、ちょうど夕暮れがぼうっと地平線へ隠れる頃だった。 夜になる前に辿り着けたのはまったく幸運なことだった。 「もし」 旅人は、ちょうど目に入った村人に声をかけた。彼は柔和な笑みをうかべて、旅人を見つめた。 「旅の方ですか」 「ええ、先ほどこちらの村に着きました」 「日が暮れる前でよかったですね。このあたりの荒野は狼も出ますから」 「ええ、まったくです」 3: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/15(金) 01:44:12.56 ID:qFXEoNRp0 旅人は、村人の様子がおだかやなことに安堵した。 そして、言った。 「実は、今晩泊まる場所がないのですが」 「それはたいへんですね」 「ええ、まったくです。なのでその、よろしければあなたの家に泊まらせていただけないでしょうか。もちろん、相応のお礼はさせていただきます」 旅人は真新しい銅貨3枚を取り出して、村人に見せた。行商人との取引がうまくいって、今はやや懐があたたかい。 村人はその銅貨をまぶしそうにながめて、返事をした。 「少々せまいですが、うちでよければ……」 「ありがとうございます」 旅人は村人に銅貨をわたそうとした。しかし、相手はそれをさえぎった。 4: ◆u2ReYOnfZaUs 2018/06/15(金) 01:44:50.89 ID:qFXEoNRp0 「そのお金は、“いま”私が受け取るわけにはいきません」 「いま?」 旅人は不思議に思った。いままでの村では、金銭を先に先にとせがまれることが多かった。 「私に家に神様がいるので、その銅貨は神様に供えてください」 「なるほど」 旅人は納得した。金がほしいことにちがいはないが、この村では、金銭欲を信仰心というブーケで隠しているのだ。 家は枯れた木の匂いがする、小さな小屋だった。 奥にかまどがあり、その手前にすすけた机と椅子。 その机の左には寝台がある。 「神様はどちらに?」 旅人はたずねた。石像や絵、小さな祭壇などがあるのかと思ったが、見当が外れた。 続きを読む