転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517483063/ 1: ◆XkFHc6ejAk 2018/02/01(木) 20:04:24.28 ID:3pcH/mqD0 少年(僕の住む村は、人里から離れた、集落のように小さな村だ) 少年(気候は常に寒い。夏冬関係なく、ほぼ一年中雪が降っている) 少年(人口はそんなに多くない。むしろ村の面積に対して少ないくらいだ) 少年(そして) 少年(この村には掟がある) 少年(それは、村の外に出てはいけないと言う事) 2: ◆XkFHc6ejAk 2018/02/01(木) 20:05:26.66 ID:3pcH/mqD0 少年「ああ、寒い寒い」 少年(この村の人達は一人で行動する事が多い) 少年(僕も例に漏れず、此処で釣りをするのが好きだ) 少年(静かな世界で、聞こえてくるのは水の音だけ) 少年(ああ、落ち着くなぁ) 3: ◆XkFHc6ejAk 2018/02/01(木) 20:09:08.45 ID:3pcH/mqD0 少年「……お!」ピクッ 少年(……よし、かかった!)クンッ 少年「うおっ、こ、これは……」ググッ 少年(すごい引きだっ……! これは大物だぞ……!) 少年「ぐ、ぎぎっ……ああっ!!」ザバッ 少年「お、おお……やった!!」 少年(「星屑イワナ」と呼ばれる魚だ。表面の皮にきらきらした結晶が付いている) 少年「……命を、いただきます」スッ 少年(僕は用意していたナイフで、出来るだけ苦しまないように魚を締める) 少年(その瞬間、抑えていた魚がびぐんと痙攣を起こす) 少年(何度釣っても、この瞬間だけは好きになれない) 少年(そうしてさっさと血抜きを済ませてしまい、それを雪を詰めた袋にしまう) 少年「……よし」 少年(そろそろ帰ろうかな) 少女「此処に居たのね。どう、釣れた?」 少年「! やあ。大物が釣れたばかりだよ」 少年(少女はいつも何処からともなくふわりと現れる。雪みたいな子だ) 少年(村の子供は僕と少女だけ。だから僕らはよく一緒に居る) 少年(彼女が頭を払ってくれたおかげで、ようやく頭に雪が積もっていた事に気が付いた) 少年「星屑イワナが釣れたんだ、ほら」 少女「……わあ、綺麗ね。まるでまだ生きているみたい」 少年「……」 少年(彼女の言葉が突き刺さる。それは僕が奪ったばかりの命だ) 少女「あ……ごめんね。悪気があった訳じゃないのよ」 少年「うん。大丈夫だよ」 少女「少年は優しいのね……ほら、戻ろう?」 少年「……うん」 少年(彼女はそう言うと、僕の手を引いて歩き出す) 少年(彼女の手は温かい) 少年(彼女に触れていると、少しも寒くないんだ) 4: ◆XkFHc6ejAk 2018/02/01(木) 20:10:34.05 ID:3pcH/mqD0 少年(村には、入ってはいけない洞窟がある) 少年(十二歳になると、お祝いのお祭りと共に、洞窟に入る許可を貰える) 少年(僕と少女は誕生日が同じだ。ちょうど後一週間で十二歳になれる) 少年(今年は何をプレゼントしようかな) 少年(どうしようかな、何が喜んでくれるだろうか) 少年(その時、ふと昨日釣った星屑イワナを思い出した) 少年「そうだ、あの結晶を使って何か作ろう!」 少年(どんなものが良いかな、……そうだ) 少年(よし、決めたぞ! きっと綺麗なものになるはずだ) 少年(そうと決まれば、善は急げだ) 少年(喜んでくれるといいな) 続きを読む