転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515902602/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/14(日) 13:03:22.47 ID:w3W5B1rkO 隊長のうなじのあたりには『お姉ちゃんスイッチ』が付いている。 ダイヤル式で結構固く、目盛りは二つ。 「黒森峰の鉄の隊長」と、「優しいお姉ちゃん」と。 (バカじゃないの) 何が「お姉ちゃんスイッチ」か。 全部なにもかも、あの子が考え出したくだらない遊び、ただの甘えだ。隊長も隊長で甘いのだ。隊長はいつもあの子には甘いから。 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/14(日) 13:04:11.06 ID:w3W5B1rkO (まぁ、でも) ダイヤルが固い、というのはちょっぴり好ましいかもしれない。隊長らしいのかもしれない。隊長は西住流だから、鋼の心はきっとそう簡単には切り替えられないのだ。そういうところは、なんだか隊長っぽい。 などと考察をして、いっそうバカバカしい気分になる。 こんなオママゴトは自分には関係ない。 私はあの人の妹ではないしあの子ほど甘ったれてもいないのだから。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/14(日) 13:04:57.65 ID:w3W5B1rkO 隊長が日本を離れるその日。 空港のエントランスの片隅で。大勢の人達が行きかう喧騒の中で。 さよならを言う隊長の声が、おどけた。 「エリカ、私の『お姉ちゃんスイッチ』をoffにしてくれ。このままじゃドイツに行けない」 隊長は私の今日までの強がりをあっけなく台無しにした。 本当は怒ってやりたいのに、そのはずなのに、胸の奥がきゅっとする。ああ本当にもう、何もかも台無しだ。 4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/14(日) 13:05:36.57 ID:w3W5B1rkO 「ほらエリカ、早く」 隊長がくるりとこちらに背中を向けて、後ろ髪を持ち上げる。あらわに露出したその首筋。こちらを覗く隊長の口の端が、黒森離れしたやんちゃな角度で笑んでいる。 寂しい。 嘘でしょアンタ、と自分自身にうろたえる。 だって今、ちょっと泣きそう。 5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/14(日) 13:06:52.04 ID:w3W5B1rkO 「……っ」 いよいよ目頭が熱くなって、ふざけないでと瞼を食いしばる。 まさかまさか、自分がこんな感傷的な気分になるなんて。 寂しい。 「エリカ? どうした?」 「あ、いえ」 慌てた。隊長の顔が振り向きそう。冗談じゃない。こちとらガラにもなく涙ぐんでしまってるのだぞ。 「す、すみません、すぐにやります」 続きを読む