転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431112245/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/09(土) 04:10:55.29 ID:bI35FBZL0 材木座「♪~」 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/09(土) 04:11:46.03 ID:bI35FBZL0 八幡「由比ヶ浜お前……食いすぎだろ芋」 結衣「いいじゃんもー!ヒッキーも食べてみなよ美味しいから!」 八幡「いいって俺は」 年も明けて三学期。二年生はそれぞれ進路を決めたり、部によっては後輩への引継ぎ準備を始めている。クリスマス会以降、特に依頼もない奉仕部は貴重な青春の時間を読書とスマホに費やした挙句、こうして呑気に買い食いなんかをしていたり。もっとも食ってるのは由比ヶ浜一人なわけだが。 結衣「うまうま♪」 雪乃「由比ヶ浜さん……わかってるとは思うけどサツマイモは炭水化物だから食べ過ぎると」 結衣「だーいじょうぶだよゆきのーん!後でしっかり運動するもん。それに消化もいいから太らないし♪」 雪乃「もう……」 呆れたように溜息をつく雪ノ下。いるよなー食べた分は運動すれば解消されるとか思ってる奴。 八幡(この分だとビッチのほかにぽっちゃり属性までつきそうだな」 結衣「聞こえてるし!ヒッキーったらそんな事ばっかり言って!!サイテー!」モグモグ プンプン 八幡「いや、食うか喋るかどっちかにしなさいな」 雪乃「比企谷君じゃないけどその内お腹がカエルみたいになっちゃうわよ?」 八幡「なんで俺を引き合いに出した!?ちゃんと引き締まってるから!」 結衣「もーーー!!!ゆきのんまでぇ!!いいもんあげないもん!」 雪乃「はぁ……しょうのない子ね」 口いっぱいに焼き芋を頬張って歩く女の子を俺と雪ノ下が挟むようにして歩く。由比ヶ浜が少し先を歩いてはこちらを振り返って楽しげに喋る。遊びの興奮がまだ冷めない親子連れの子供のようだ。そんな子供の様なこいつに、俺も雪ノ下も救われたのかと思うと不思議なものである。雪ノ下はというと、以前までの堅い雰囲気は薄れ、由比ヶ浜を見る目はさながら母親のようなそれである。 あと少しで俺達も3年。こうしてゆっくりする時間も少なくなる。遠回りしてきた時間を惜しいともなく、これからの日々を不安に思うでもなく、今日もいつもの一日だったなと安堵に似たような気持ちで俺はその日帰宅した。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/09(土) 04:12:37.33 ID:bI35FBZL0 ~比企谷宅~ 小町「お兄ちゃんおっかえりー!」 八幡「おう」 帰宅。と同時に愛しい妹の出迎え。この年頃なら反抗期が来て兄を嫌っても可笑しくない年頃だとは思うが、小町を見るにあまりそんな兆候は見られない。出来れば小町の反抗期=サンにはこのままスリープ状態のままでいてもらいたい。オタッシャデー 小町「ん?お兄ちゃんなんか匂う?お芋……あ、焼き芋の匂いだ!」クンクン 俺の首周りに鼻を鳴らす小町。犬かお前は。なんか段々由比ヶ浜に似てきてるような気がする……アホになってしまわないかお兄ちゃん心配よ? 八幡「由比ヶ浜が買い食いしてたんだよ。その時の匂いだろ?ったくあいつめ」 小町「あ!それひょっとして昨日今日出来た焼き芋屋さんでしょー!!小町も明日帰りに買いに行くんだー!」 八幡「そんなに上手いもんかねぇ。どれも同じだろ芋なんて」 小町「噂だけど、なんでも体中の老廃物を全部吸収してくれるんだって!サツマイモって調理方法もこんなにあるし。小町も楽しみだなー♪」 八幡「そんなもんかねぇ」 小町「あ、そういえば!お兄ちゃん由比ヶ浜さんと帰宅ですかぁ~?」ンフフフ 八幡「別に他意はねぇよ。向こうだってそうだ。最近はいつも部活の3人で帰ってるってだけだ」 小町「雪ノ下さんもか~。んー小町的にはどうなんだろうなー。どっちも応援したいというか」 八幡「はぁ……なんでも色恋ばっかに繋げんなって。ビッチ脳になっちまうぞ?」 小町「わかってないなぁ~お兄ちゃんは。女の子なんて良くも悪くもそういう事には興味あるんだよ~」 八幡「はいはいリア充乙っと。俺にはわからん世界の話だわさ」 小町「……」ムー 八幡「着替えて晩飯作るから。お前はそれまで勉強しとけ」バタン 小町「……変なとこばっか気を回して肝心な時は馬鹿なんだから。二人とも苦労するよきっと……はぁ」 ギーッ 八幡「いいよ。俺にはお前がいるし」 小町「うわわっちょっ!!!もう!独り言に返事しないで!」 八幡「へいへい」バタン 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/09(土) 04:13:11.49 ID:bI35FBZL0 やたらと本の多い自室。とりあえずカーペットについた猫の毛をコロコロで回収する。小町め、また俺の部屋にカマクラと入ったな。 かつて勉強道具と蛍光灯を乗せる以外は役立たなかった机には何枚もの写真がある。キャンプの時、文化祭の時、クリスマス会の時。小町以外の人間たちと関わってきた確かな証がそこにあった。 今の俺はもはやポリシーの上でなりたった『ぼっち』でしかない。 ならぼっちじゃない比企谷八幡とはなんなのか? かつての俺と今の俺。 数々の黒歴史を乗り越えて築いた俺の理念は確かに本物だ。 じゃあ彼らと関係を築いた末の今の俺は偽物か。 否。 今の俺も確かに本物である。ならばこそ。 ならばこそ彼らとの絆も本物であると信じたい。自慢ではないが俺は誰よりも自分が好きなのだ。 俺だからこそ、今も昔も比企谷八幡を肯定できるのだ。 八幡「意地悪言うなよな。小町、俺は」 今の俺は、大切な人間が多すぎる。孤独を愛するぼっちにはこれは苦行であろう。 雪ノ下雪乃。 由比ヶ浜結衣。 二人の女性の好意を知ったとて、それは変わらないのである。 ……… …… … 続きを読む