転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1443527875/ 1: HAM ◆HAM/FeZ/c2 2015/09/29(火) 20:57:55 ID:9M3gzuQk きれいな瞳をしたその彼女は、名前をリューといった。 出会う前からその名前を知っていた。 周りのみんながそう呼んでいたから。 だから、僕も彼女を「リュー」と、そう呼んだ。 気持ちを込めて。 僕が呼ぶと、こちらを向いてにっこり笑った。 僕は、意味もなく彼女の名前を呼ぶのが好きだった。 2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/29(火) 21:04:00 ID:9M3gzuQk ・ほぼ地の文 ・一部明言されていない設定がありますが、お好きなイメージでお読みください 3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/29(火) 21:08:05 ID:9M3gzuQk 彼女は出会ったときから、僕よりもずっと早くその命を燃やしていた。 僕がおかしいのか。 彼女がおかしいのか。 それが僕にはよくわからなかった。 周りのみんなは僕と同じスピードで生きていたから、たぶん彼女が特別なのだろう。 4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/29(火) 21:14:06 ID:9M3gzuQk 僕らと彼女の食事は違う。 彼女用の食事は、決められた時間にトレーに乗ってコンベヤから運ばれてくる。 彼女は朝と夜、一日に二度食事を摂らなければならない。 それは不便だと、僕は思う。 僕らの食事は、夜に摂るだけだ。 それで次の日まる一日、十分に活動できる。 そういう風にできている。 彼女の分の食事は、まだあまり発達していないのだろう。 可哀想に。 5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/29(火) 21:23:09 ID:9M3gzuQk ある日、彼女の体が汚れたので、僕が風呂に入れてやることになった。 外では雨が降っていたのに、なにも身に着けずに出て行ったそうだから。 それは、もう、仕方がない。 汚れるのは仕方がない。 僕は彼女に対して、怒る気持ちは湧いてこなかった。 普通なら怒るところだそうだが、まあ、僕は普通じゃないんだろう。 怒らない僕を、彼女は不思議そうに見上げていた。 6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/29(火) 21:37:32 ID:9M3gzuQk 湯を適温にして、彼女の体を温めてやる。 雨に濡れた体を洗ってやる。 強く握りしめると壊れてしまいそうな小さな体。 弱い体。 そっと愛おしむように洗ってやる。 「愛おしむ」なんて感情が、僕にはよくわからないけれど。 でも、「愛情を持って接すること」と命じられているので、それに従う。 僕はそれに従うしかない。そういうものだ。 続きを読む