転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526653325/ 1: ◆XUWJiU1Fxs 2018/05/18(金) 23:22:05.90 ID:lFsgkv9uo 最初に彼女を見た時、気弱そうな女の子に見えた。本人は熊本の女は強いんです、と口癖のように言っていたけど恥ずかしがり屋であがっちゃって、ワタワタとして落ち着きがなくて。そんな姿が可愛いという声は多かった。とはいえ実際彼女は芯の強い子でその看板には偽りは無かった。それでも可愛い女の子、という印象は強く俺も彼女の一挙一動の可愛さにドキりとする事はあった。その都度あの子は担当アイドルだ! と言い聞かしてきたのだけど……。 「プ、プロデューサーさんの事がですね……す、すきなんですっ!」 告白、されちゃいました――。 2: ◆XUWJiU1Fxs 2018/05/18(金) 23:23:14.03 ID:lFsgkv9uo 「で、OK出しちゃったと」 「いやぁ、お恥ずかしい……」 「何やってるんですか……」 事務員のちひろさんは呆れたようにため息をつく。気持ちはよく分かる。年下のアイドルに手を出してしまったプロデューサーなんて、最低最悪の存在だ。その自覚は強くある。 「一応最初は断ったんですよ? 美穂はどちらかというと妹みたいに見てましたし……」 「確かに傍から見ていたら仲のいい兄妹にも見えなくはなかったですが。でも結局付き合ってるんですよね」 「意識しだしたら止まりませんでした、ええ」 「まったくもう……うちのお偉いさんも自分が育てたアイドルと結婚してしまったのであまりキツく言えないんですが……」 そう、そこなのだ。俺の上司である某氏も担当アイドルと出来婚をしたという事情があるため何を言ってもブーメランになってしまう。 それともうひとつ、打算的な理由ではあるがプロデューサーとアイドルの間に強いつながりが生まれることでプロデュース活動を円滑に行う――ある意味マインドコントロールな気もしなくはないけどそれらの理由から打ちの事務所では暗黙の了解として恋愛を許されている。勿論それにかまけて堕落してしまう場合はそれ相応に痛い目を見ることになるのだけど。 3: ◆XUWJiU1Fxs 2018/05/18(金) 23:24:53.47 ID:lFsgkv9uo 「でも1人の女子から言わせてもらうと」 「女子?」 「女子ですよ!」 ちひろさん、笑顔で足を踏まないでください。 「美穂ちゃんはプロデューサーさんに対して強い憧れを抱いていましたからね。あんまりこういうこというと怒られちゃうんでしょうけど、素敵な衣装を着て観客の前で歌った時と同じくらい、プロデューサーさんが近くにいるとあの子笑顔でしたから」 ちひろさんの言葉に胸が痛くなる。美穂を応援しているファンのみんなは当然俺と彼女の関係を知らない。美穂がインタビューなんかで俺の話題をする事があるくらいで、プロデューサーなんて所詮は裏方家業だ。 「正直、裏切っている罪悪感はあります」 プロデューサーはそのアイドルの1番目のファンである。でもだからって、他の人には見せない笑顔を独占しても良いのだろうか。もし俺にしか見せない笑顔をみんなに見せる事ができたのなら、彼女のファンはもっと増えたんじゃないだろうか。自問自答にキリはない。 「そう思っているだけ、プロデューサーさんはマシな部類です。酷い時は2人だけの世界を作って周りが見えなくなっちゃうなんてのもありましたからね」 自分たちだけは大丈夫だ、なんて言える保証はない。アイドルとプロデューサーである以前に人間である、男と女である。いつどこで間違いが起こるかなんて想像が出来ないのだから。 「どちらにせよ。美穂ちゃんを泣かせちゃダメですよ」 「肝に命じておきます」 ちひろさんの言葉が重く響く。 続きを読む