転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1431523111/ 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/05/13(水) 22:18:31 ID:Y61Uq.Rk 注…鬱END・地の文 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/05/13(水) 22:19:34 ID:Y61Uq.Rk 俺は雷巡の木曾だ。とある鎮守府で艦娘として戦ってる。 俺たちの鎮守府はみんな仲が良くて、団結も強い、文句なしの鎮守府だ。 そんな俺の一番のライバルであり、親友ともいえるのが、同じ巡洋艦の天龍だ。 ときには戦績を巡って共に硝煙の下をくぐり、ときには提督を巡って恋を戦ってる。 長きにわたっている深海棲艦との戦いは人類側が押していて、勝利は近いと言われつつあった。 だから近頃の作戦の合間には、天龍と提督とでピクニックに出かけたり、街に出て遊んだりして楽しむ余裕があった。 そんな厳しくも楽しい日々が続いていた。…そしてこれからも、ずっとつづくと思ってた。 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/05/13(水) 22:20:08 ID:Y61Uq.Rk ある日、俺と天龍は駆逐艦たちを引き連れて遠征に向かった。何の変哲もないいつもの資源輸送任務。 戦線から遠い海域で、自分たちが優勢な立場にあるという安穏に浮かんでいた俺たち。 その平穏が、一発の砲声で数秒前の跡形もなく消え去った。 まさか遭遇するとは予想だにしていなかった、強力な敵部隊との遭遇。急いで輸送資源を捨てろと叫ぶや、俺と天龍は迎撃の火ぶたを切った。撃った。撃ちまくった。だが、敵の火力は衰えない。 駆逐艦たちも健気に応戦するが、優勢な敵の砲火の前に次々と被弾していく。………このままでは撃沈される艦が出る。 気づけば前面に出ていた俺も天龍も小破していた。傷だらけになった己の艤装を見ながら、どうしようもない現実が苦みを増して這い上がってくる……俺たちはこいつらを守り切ることができない。 だがしばらくして、鎮守府から無線で撤退命令が出た。救援部隊も出撃したと無線が入る。これでチビたちを守りつつ撤退できる。 俺と天龍が思わず安堵の目を合わせた刹那だった。まるでその時を狙い澄ましていたかのように、足元の海面が沸騰して盛り上がり、まず海水の瀑布が視界を覆い隠し…裂け目から蒼穹の青空が飛び込んできて、宙に浮かんだ俺は海面に叩きつけられた。 激痛にのたうつ身体の悲鳴が、雷撃を受けた自分の無様をひと呼吸おいて否応なく伝えてくる。 しかしそれでもまだ浮かんでいる自分の上体を海面から引き剥がすように起こし、とばっちりを喰らったであろう相棒の方を見やる。 天龍も、被雷して海面に引き倒されていた。 ………情けねえな、俺たち。 苦しそうに身を起こしながらも天龍は確かにそう言って、頭のどこかから滴らせた血で濡れた顔に苦笑を浮かべていた。 涙交じりの悲鳴を上げながら、駆逐艦たちが俺たちの周りにひな鳥のように寄ってきた。 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/05/13(水) 22:20:54 ID:Y61Uq.Rk いたいけなこいつらは、俺と天龍を曳航しようと、俺たちのぼろぼろの身体を引き起こそうとする。 しかし小破あるいは中破した駆逐艦たちが、大破状態の巡洋艦二杯を引っ張って海域を脱出することなど不可能だ。 それを分かっているにもかかわらず、駆逐艦たちは涙を振り絞って俺たちを曳航しようともがいている。 ………だめだ、やめろ。俺たちなんか置いてすぐに逃げるんだ。ほら、敵機が集まってきたぞ、ここで固まってちゃだめだ… そう言いつつも俺も天龍も、愚直なほどに健気な駆逐艦たちの献身に、思わず涙をにじませた。 すぐ訪れるだろう死ももう怖くはなかった。俺も天龍も、ただただ、ここまで連れてきてしまったチビ達を沈めたくはなかったのだ。 かくなる上は駆逐艦たちに、より酷い大破状態の天龍を曳航・退避させ、まだ被害のマシな俺は決別電報を打電して敵部隊に肉薄・自爆してこれを援護する…俺はその覚悟を決めようとしていた。 が、その鎮守府から更なる無線が入った。駆逐艦の誰かが現状を伝えたのだろう、それを受けた提督の命令はあまりにも切なかった。 駆逐艦は雷巡木曾のみを曳航し、速やかに現海域より退避せよ 思ったよりも頭が内容を冷静に理解し、続いて思ったよりも強い激情が腹の底から吹きだした。 ………ふざけんな!どうしてそんな残酷な命令を出すんだよ!俺はいいから、天龍を助けてやってくれよ!提督…! そう叫びながら、心のどこかでは理解していたのだ。ここから俺と天龍の二杯を駆逐艦の曳航で脱出させることはできない。敵も時間もそれを許してくれないだろう。 ならばせめてどちらかだけでも救い出せるのであれば救い出す。そうなれば、選ぶべきは… 続きを読む