転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526255008/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/14(月) 08:43:28.45 ID:EZCEfSpa0 ――羽丘女子学園 中庭―― 美竹蘭(友達とはどういうものだったか) 蘭(きっとそれはどうでもいいことで笑い合えたり、お互いのことをよく知っていて、突然のお願いとかも簡単に了承できるとか、そういう関係だと思う) 蘭(気の置けない仲で、だからこそたまにぶつかり合ったりして、でもすぐに仲直りして、また笑い合える。一種の信頼関係だろう) 蘭(少なくともあたしはそう考えている) 蘭(ただ、今目の前にいる人物とはそういう関係ではないと思うから、あたしに放たれた言葉がすんなりと頭に入ってこなかった) 湊友希那「聞こえなかったかしら? バンドをやらないか、と言ったのよ」 蘭「いや、聞こえてますよ。聞こえた上で思ってるんです。『何言ってるんだこの人』って」 友希那「あら、随分な言葉ね」 蘭(湊さんはそう言うと、『やれやれ』というニュアンスの入ったため息を吐きだしていた) 蘭「大体、バンドをやらないかって……もうやってるじゃん、あたしも湊さんも」 友希那「そうね」 蘭「そうねって……」 蘭(明らかに言葉足らずな返事に少しだけいらつく。アフターグロウのみんなならその言葉だけで大体のことは伝わるし、それなりに付き合いがある友達なら何となく意図が汲めないこともない) 蘭(ただ、もう一度言うけれど、湊さんとはそういう関係ではない。だからあたしに何が言いたいのかさっぱり分からなかった) 蘭「わざわざ中庭にまで呼び出して、話はそれだけですか?」 友希那「そうよ」 蘭「分かりました。それじゃ、あたしはもう教室に戻りますので」 友希那「まだ返事をもらってないわよ」 蘭「察してくださいよ。あたしはやりませんからね」 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/14(月) 08:44:20.33 ID:EZCEfSpa0 今井リサ「あ、いたいた。おーい友希那~!」 蘭(踵を返し、とっとと教室に戻ろうとしたあたしの耳にリサさんの声が届く) 蘭(湊さんのことは正直どうでもよかったけど、リサさんには色々とお世話になっている部分もあった。流石に挨拶の1つくらいはした方がいいだろう) 蘭(そう思い、動かしかけた足を止める) 友希那「リサ、遅かったわね」 リサ「友希那が早すぎるんだってば。待っててって言ったのにさっさと先に行っちゃうし」 友希那「……そうだったかしら」 蘭「こんにちは、リサさん」 リサ「うん、こんにちは、蘭」 蘭「それじゃ、あたしはこれで」 友希那「待ちなさい」 蘭「……まだなにかあるんですか。やらないですよ、あたしは」 リサ「あれ、もう友希那から話聞いたの?」 蘭「ええ。話ってほど話じゃありませんけど、出会い頭に『バンドやらない?』とか言われました」 リサ「……それだけ?」 蘭「はい」 リサ「はぁー……」 蘭(あたしの言葉を聞くと、リサさんは大きくため息を吐き出した) リサ「友希那、流石にそれだけじゃなんも伝わらないって」 友希那「最終的には同じことじゃない」 リサ「いやいやいや……あー、ごめんね、蘭。友希那が言葉足らずで」 蘭「いえ……」 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/14(月) 08:45:04.18 ID:EZCEfSpa0 リサ「えーっとね、まだ時間ある? あれば、理由だけでも聞いてくれないかな」 蘭「……まぁ、それくらいであれば」 リサ「うん、ありがと」 蘭(そう言ってリサさんはニコリと笑う。相変わらず、パッと見た外見と反したとても優しい笑顔だった) リサ「バンドをやらないかってのは友希那に言われたんだよね? で、その理由なんだけどさ……ウチの紗夜がね、最近自分のギターが伸び悩んでる気がしてて、花女の方でバンド組んでみるって話になってるんだ」 蘭「はぁ。それとバンドを組もうっていうのに何の関係が?」 リサ「それはね――」 友希那「紗夜のためよ」 蘭(言いかけたリサさんに被せるように、湊さんが口を開く) 友希那「いつもとは違うバンドを組んで演奏をして、そこで自分の音というものがどんなに良くなっているかを実感してほしいの」 友希那「でも、ライブハウスでただ演奏するんじゃつまらないでしょう?」 友希那「折角の機会だもの。私もいつもと違うメンバーとバンドを組んで、それに真っ向からぶつかりたいのよ。いわば対バン、ね」 リサ「……そういう感じなんだ。ホントごめんね、友希那が言葉足らずで……」 リサ「それで、蘭に協力してもらえないかなって、お願いに来たんだ」 蘭(リサさんは申し訳なさそうに言葉を続ける。どうしてか不遜な態度でいる湊さんとはずいぶん対照的だ) 蘭「話は分かりましたけど……どうしてあたし? ギターなら、羽丘には日菜さんや瀬田先輩がいるじゃん」 蘭「紗夜さん相手に対バンするっていうなら、なおのこと日菜さんを誘えばいいじゃないですか」 友希那「いえ、あなたはギターボーカルよ」 蘭「は? 湊さんと一緒に歌うんですか?」 友希那「いいえ。私はキーボードを弾くわ」 蘭「……はぁ?」 友希那「ロゼリアで作曲をしているのは私よ。ギターやキーボードならちゃんと弾けるわ」 蘭(あたしの疑問の声に少し的を外した言葉が返ってきた) 続きを読む