転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523958840/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/17(火) 18:54:00.39 ID:opkaBdCO0 まほ「来ないな……」 早朝。学園艦黒森峰女学園の戦車道練習用グラウンドで。 私こと西住まほ以下、戦車道履修者たちは一向に現れる気配のない逸見エリカを待ち続けていた。 日課の朝練である。 いつもならエリカは誰よりも早くやってきて睨みを利かせているのだが、今日に限っては定刻を過ぎても姿を現していなかった。 まほ「仕方ない、呼びに行ってくる。エリカが寝坊するとは思えん。連絡も出来んほど体調を崩してるのかもしれない」 赤星「それなら私が……」 まほ「いや、あいつも弱った姿をあまり見られたくはないだろう。お前たちは先にいつものメニューを始めていてくれ」 告げて、私は練習場を後にし寮へ向かう。 ああは言ったが、エリカも人間だ。寝坊することもあるだろう。 あいつは私の中で次期隊長に内定している。 これから指揮する相手に弱みを見せたがる性格でもないし、ここは私が一肌脱いでやるとしよう。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/17(火) 18:54:16.64 ID:opkaBdCO0 まほ「さて、部屋についたわけだが……エリカ。起きてるか?」 扉をノックする。返事はない。 まほ「本格的に寝坊か……? ふふっ、隊長である私の声にも反応しないほどぐっすりとは、可愛いところもあるんだな」 私は腰のホルスターから、代々黒森峰の隊長に伝わっている懲罰用拳銃を引き抜いた。 まほ「仕方ない。エリカ、入るぞ」 鍵はかからないようになっている。私は銃を持っている方とは逆の手で躊躇なくノブを捻り、部屋の中に踏み込んだ。 これまでにも何度か入る機会はあったが、相変わらずエリカの部屋は酷く小ざっぱりとしている。 机とその上の教科書文房具類。小さな本棚。金属の目覚まし時計。ベッド。ベッドにのっそりと横たわる巨大なナイルワニ。 ……ワニ? ワニ「……」 まほ「……」 爬虫類特有の、あの縦に裂いたような細い瞳孔がゆっくりと動き、私の視線と衝突した。 まほ「邪魔したな」 即座に扉を閉めて廊下に戻る。西住流で鍛えられた判断力の賜物である。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/17(火) 18:54:44.09 ID:opkaBdCO0 まほ「おかしい。何故ワニがエリカの部屋に」 おまけにアホみたいにでかい。確実に5m以上はあったぞ。 そういえばナイルワニは海水に耐性があり、海中で暮らす個体もいるという。 もしや何かの拍子に学園艦に入り込んでしまったのか……? まさかエリカが寮の一室で巨大ワニを飼育しているやべー奴だったということはあるまい。 エリカは真面目な子だ。少しだけ堅い部分があるが、その分信用は出来る。 まほ「そうだ。肝心のエリカはどこだ?」 ぱっと見て、部屋の中には居なかった。外に出ているのなら朝練に参加している筈。 ならばやはり部屋の中にいて、それでいて姿が見えないということは―― まほ「貴様っ、私の可愛い後輩を喰ったな!?」 バタン! と扉を蹴破って再突入。音と衝撃に反応して、その巨体からは想像も出来ないような敏捷さでワニが振り向いてくる。 まほ「だが遅い! 喰らえ西住流殺人拳……!」 西住流殺人拳は西住流に伝わる殺人拳である。拳が掠っただけで相手は"ボン!"だ。 だがワニは人間じゃなかったので効かなかった。 ワニ「グォオオオオオ!」 まほ「わ、わぁああアアア!?」 こちらの拳をぺしりと尻尾で打ち払うと、ワニはその巨大な顎門で私を噛み千切ろうと襲い掛かってくる。 まほ「よ、よせ! 話せばわかる! 暴力はよくないぞ!」 物凄い力で閉じようとしてくる上顎と下顎を右腕と足を使って全力で押しとどめながら、私は説得を試みた。 誠意があれば伝わる筈だ……! 左手でポケットの中に入っている筈の実弾を探りながら祈る。今拳銃に装填されてるのは懲罰用ゴム弾なのだ。 続きを読む