転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521708562/ 1: ◆7OUWtrrklk 2018/03/22(木) 17:49:22.78 ID:i93qXE2v0 地の文があります 書き溜めているので一気に投下します 過去作→提督「霞にケッコンを申し込んだら意外にもOKを貰ってしまった」 2: ◆7OUWtrrklk 2018/03/22(木) 17:50:00.21 ID:i93qXE2v0 カリカリとペンを走らせる音だけが司令室に響く。時刻は正午を少し回った位で、まだ昼の休憩までは時間があった。 秘書艦は吹雪型五番艦である駆逐艦叢雲。提督にとって最も古い付き合いである艦娘であり、最も信頼のおける艦娘の一人である。 提督「……叢雲」 叢雲「遠征の報告書ね。今確認しているところだから少し待ってて」 提督「……それと」 叢雲「重巡と軽巡の練度向上の計画書はもう提出してあるわ」 提督「……助かる」 叢雲「どういたしまして」 以心伝心、阿吽の呼吸、ツーカーの関係と言えば分りやすい。自分が考えていることを叢雲は察してくれて、自分も叢雲の考えていることはある程度分かる。 最初期からこの鎮守府を支えてきた二人だからこそできる芸当であった。 3: ◆7OUWtrrklk 2018/03/22(木) 17:50:30.29 ID:i93qXE2v0 叢雲から渡された書類を次々に片づけていく。できれば昼休憩までには終わらせたいものだ、と考えながら提督はペンを走らせる。 どうやら叢雲は自分の分を片付けてしまったようで、ぐーっと上に伸びをして首を左右に振っていた。 提督「……すまないな、叢雲。休憩なら先にとっていい」 叢雲「何言ってんのよ。秘書艦として当然の仕事をしたまでだわ。……お茶を淹れてくるから少し待っていなさい」 提督「……助かる」 自分は口下手な方だ。昔からそれが災いし面倒に巻き込まれることも多かった。しかし叢雲は最初のころはともかく時が経つにつれて自分のことをよく理解してくれるようになった。 お茶を淹れている叢雲の背中を一瞥してから再び書類に目を移す。 そしてカリカリとペンを走らせる……走らせようとした。 提督「……」 ペンが、動かない。 それに気付くと同時に一気に体の力が抜けて行った。ピンと伸ばされた背筋はだらしなく猫背になり、厳格で提督然とした顔つきはのぼっとだらしない表情になって上を向く。 鎮守府にいる全ての艦娘にこの姿を見せたらほとんどの者は唖然とするだろう。それはまさしく醜態だった。 4: ◆7OUWtrrklk 2018/03/22(木) 17:50:58.30 ID:i93qXE2v0 叢雲は提督に背を向けてお茶の準備をしているためまだ今の提督の状態に気付いていない。 提督「……叢雲」 叢雲「何よ? 羊羹ならまだあるけどお昼前だから我慢しなさい」 提督「……切れた」 その一言を聞いた叢雲の動きがピタッと止まる。そしてふぅと一つ息を吐いてこちらを向いた。 叢雲「もう、仕方がないわねえ」 やれやれ、と言った感じで叢雲は言う。しかしどことなく嬉しそうな気がするのは自分の気のせいだろうか。 淹れたばかりのお茶を机の上に置き、叢雲は自分の膝の上に乗る。 叢雲が心臓の音を聴くように、自分の胸にしなだれかかる。……ふんわりと、椿のいいにおいがした。 提督「椿か」 叢雲「あら、よくわかったわね。白椿のいいのを熊野に教えてもらったのよ」 提督「お前によく合っている」 叢雲「ふふっ、ありがとう」 そう言って叢雲は顔を上げる。 叢雲「……ほら、こっち向きなさい。誰かが来たら困るのは一緒なんだから……さっさと始めるわよ」 提督「……ああ、そうしよう」 自分の手が叢雲の頬に触れる。それを合図として叢雲はゆっくりと目を瞑った。 続きを読む