転載元 : http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1521119085/ 1: 名無しで叶える物語(有限の箱庭) 2018/03/15(木) 22:04:45.97 ID:X98plIJy 「……けてっ、たす……けてっ」 彼女の全身に影のように黒い蛇の群れがまとわりついてゆく (ch……うっ……) 彼女の名前を叫びたくとも声が出せない 一歩を踏み出すことも、手を伸ばすこともできない そうこうしている間に彼女の身体は蛇の濁流に呑み込まれつつあった 「り、こ……ちゃんっ……ぐっ」 彼女の真っ赤な瞳に映る自分の姿を見て、身動きが取れない理由がわかった わたしは神話に出てくるバジリスクやメデューサに睨まれた獲物のごとく、石像となっていたからだ 2: 名無しで叶える物語(有限の箱庭) 2018/03/15(木) 22:06:29.48 ID:X98plIJy 梨子「千歌ちゃんっ! ……夢?」 ふぅ、と胸を撫で下ろした ここ内浦に引っ越して来てから、長らく悪夢にうなされたことなんてなかったのに 梨子「お布団掛け過ぎたからかな?」 うん、たぶんきっとそう 「明日の朝は冷え込むでしょう」という予報を鵜呑みにしたのが裏目に出たからに違いない この汗だって冷や汗じゃなくて暑さでかいたものだ、うん 4: 名無しで叶える物語(有限の箱庭) 2018/03/15(木) 22:08:12.51 ID:X98plIJy 梨子「……綺麗な月」 カーテンの隙間から見える満月は真紅に染められていた 世間では赤い月に「大災害の予兆」等の不吉なイメージが浸透しているが、わたしはむしろ真逆の印象を抱いている 活力に溢れつつ、同時に穏やかな温もりをも湛える彼女の瞳を想起させるから 引き寄せられるように階段を下り、玄関へ歩を進める 梨子「いってきます」 独りごち、カーディガンを羽織って外へ出た 5: 名無しで叶える物語(有限の箱庭) 2018/03/15(木) 22:09:55.84 ID:X98plIJy 寄せては返す波の音だけが心地よい静寂の中、わたしは今一番会いたかった人を見つけた 月光に照らされた彼女の橙色の髪を、夜風が優しく撫でている 梨子「千歌ちゃん?」 千歌「梨子ちゃんっ!?」 両目が見開かれたのも束の間、すぐに普段通りの屈託のない笑顔を見せてくれた 千歌「……こんばんは、梨子ちゃん」 梨子「うん、こんばんは」 続きを読む