転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521126526/ 1 : ◆foQczOBlAI 2018/03/16(金) 00:08:47.17 ID:ATGtnjHo0 それは遠い昔の記憶を呼び覚ます行為だった。 ゆさゆさと心地よい揺さぶりをかけられながら「起きて、起きてください」と繰り返される。 小学校のころ、母親に起こしてもらったことを思い出した。 一人暮らしの社会人の俺は懐かしい気持ちになりながら清々しい朝を迎えた。 ああ、こんな風に優しく起こされるのはいつぶりだろうか。……ロボにだが。 2 : ◆foQczOBlAI 2018/03/16(金) 00:09:26.19 ID:ATGtnjHo0 トントントントン、顔を洗いリビングに行くと台所から一人暮らしにはなじみのない音が聞こえてくる。 それに伴っていい匂いも漂ってくる。一人暮らしをしていると凝った朝食なんて無縁だ。 それどころか朝食もとらないこともしばしば、ダメだとはわかっているんだけどな。 朝食を作ってくれる人がいるって幸せなんだな。……これはロボだけど。 3 : ◆foQczOBlAI 2018/03/16(金) 00:10:33.37 ID:ATGtnjHo0 ロボ、ロボ、ロボロボロボロボ。俺のそんなに広くない部屋の随所にロボが配置されている。 おまけで狭いったらありゃしない。最低限の動線は確保できているし家事はほとんどしなくていいから問題ないけど。 しかし、だな。今日こそガツンと言ってやる。俺の部屋はガラクタ置き場じゃないんだぞっと。 台所からロボが二人分の朝食を運んできた。もちろん何回も言ったように俺は一人暮らしだ。二人分食べるほど大食漢でもない。 いつもの時間ぴったしに朝食が完成した。それと同時に玄関のドアが開く音が聞こえた。 合鍵渡した覚えは残念ながらないはずなんだけどな。会社の寮だから誰かしら辺りが手配したのだろう。 まぶたの裏に黄緑色を思い浮かべながら俺はため息をついた。 4 : ◆foQczOBlAI 2018/03/16(金) 00:11:19.62 ID:ATGtnjHo0 「やあ、おはよう」 「おはよう」 特徴的なツインテール。見慣れた赤いアンダーリムの眼鏡。これから学校があるのだろう、制服を着て上に白衣を羽織っている。 俺の担当アイドルである池袋晶葉だ。元気いっぱいなのはいいことだ。 「一つ聞いていいかな?」 「どうしたんだ、かしこまって。私とPの仲じゃないか」 「その手にもっているものはなんだい?」 ふふん、そんな音が聞こえたような気がした。晶葉は見事なまでのドヤ顔を浮かべて俺の問いに答えた。 生意気かわいいなこいつめ。お前もスカイダイビングの企画組んでやろうか。 もはや伝説になっているライブ演出を思い出す。担当Pの話を聞く機会があったけど徹夜のテンションで作った企画書が通って焦ったと言っていた。 幸子ちゃんなら平気だろうとすぐに切り替えたらしいけど。担当アイドルへの謎の信頼がすごい。 続きを読む