転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406620565/ 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/29(火) 16:56:05 ID:jgliRUo. 「──う…ぅ」 俺は今、目を覚ましたはずだ。 なのに周囲は真っ暗で、瞼を開けていないかのような錯覚を感じる。 腕を動かすと、じゃらりという鎖が擦れる音が響いた。 四肢を繋がれ大の字に固定されているのだ。 しかも屈辱的な事に、全ての着衣を奪われた上で。 どのくらいの時間が経ったのだろう。 俺は…選ばれし勇者たるはずの俺は魔物の砦に攻め込み、敗れ、囚われた。 砦に潜む魔物の数は想像を遥かに超えていた。 そしてその砦が魔物の軍勢にとってどういう施設なのかもまた、予想だにしないものだった。 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/29(火) 16:56:38 ID:jgliRUo. 「目覚めたか、囚われの勇者殿」 不意に視界が明るくなる。 …とはいっても、たかが松明一本が灯されただけだが。 それでもさっきまで暗闇に慣らされていた目は、眩むような感覚に襲われた。 「…あはっ、勇者ともあろう者が良いザマじゃの」 声の主は少女のような外見をしている。 しかしその背には蝙蝠のそれに似た翼が生え、淡い桃色の頭髪からは羊のような二本の角が覗いていた。 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/29(火) 16:57:11 ID:jgliRUo. 「なぜ、俺を生かしている」 「それはこれから解ろう、嫌というほどのぅ」 外見上の年齢にそぐわない喋り方で、魔族の少女は俺の心をわざと逆なでする。 くすくすと悪戯に笑うその表情は、幼く見えるはずなのにやけに淫猥に映った。 「どれ…せっかくじゃ、まずは妾が味利きするとしようかの」 彼女はその左腕を俺に翳し、聞き取れないほど小さな声でなにかの魔法を詠唱したようだった。 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/29(火) 16:57:41 ID:jgliRUo. 「うっ…!?」 途端に身体が力を失う。 もともと鎖に吊るされた状態であったため、自分の足で立ってはいなかった。 しかし今は四肢に動作を命令する事さえできないほどに、全ての筋肉が弛緩した状態だ。 「なにを…した…」 決して滑舌はよくないが、かろうじて喋る事は可能らしい。 少女は少し驚いた顔をする。 「呼吸のための筋力にはできるだけ作用せぬよう心がけはしたが、まさか口がきけるとはの…さすが勇者といったところか」 「…嬉しくないな」 続きを読む