転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497365794/ 1: ◆K5gei8GTyk 2017/06/13(火) 23:56:35.38 ID:5NDUzJbF0 一次創作です よろしくお願いいたします 2: ◆K5gei8GTyk 2017/06/13(火) 23:57:15.57 ID:5NDUzJbF0 以前友人が遊びにきた際に飲み残していったウイスキーを舐めつつ溜め込んでいた小説を消化していると、いつのまにか夜はしんしんと更け、どこかから鐘をつく音が聞こえる。 新年を迎えたのだ。 壁に掛けた時計を見れば零時を五分ほど過ぎていて、実家に住んでいた頃は決まって家族で二年参りをしていたことを思い出した。 今住んでいるアパートの近くにも神社はあるが、大学に通うために上京してから一度もそういった行事らしい行事には参加したことがない。 気まぐれに、お参りに行ってみようと思った。 今読んでいる小説は面白いけど書き口が独特で、読み応えがある分、一気に読み進めようとすると疲れてしまう。 頭を休めるためにも、酔いを醒ますにも、散歩はうってつけのような気がした。 3: ◆K5gei8GTyk 2017/06/13(火) 23:58:23.94 ID:5NDUzJbF0 マフラーを巻いて薄いコートを羽織り、手袋を嵌めて玄関を出る。 外気は驚くほど澄んでいた。扉に鍵をかけて神社に向かう。息を吸い込む度に、ウイスキーのお陰でほどほどに温まった身体の内側へ冷気が流れ込むのが心地よかった。 人気の少ない道路をひたすら歩いて目的地を目指す。幼かった頃は夜中に外を出歩くことなんてなくて、二年参りは俺にとって一年に一度の特別な行事だった。 過去のことを思い出しながら暗夜を歩く。 やがて、俺の歩く先に立っている電信柱に、誰かが背を預けていることに気付いた。 街灯にさらされてぼんやりと浮かぶシルエットは、どうやら女性のようだった。 誰かと待ち合わせでもしているのだろうか、じっと立ちすくむ彼女は、手袋を嵌めていない両手を顔の前に持っていき、吐息で温めているらしかった。 4: ◆K5gei8GTyk 2017/06/13(火) 23:59:39.61 ID:5NDUzJbF0 徐々に彼女との距離が近付くにつれて、その姿が鮮明になってくる。 見たところ彼女の風貌は、俺と同年代くらいに若かった。いくら元日とはいえ、こんな時間にひとりで人気のしない路地にいるのも危ないんじゃないかと思いもする。 すると、彼女と目線が合ってしまった。若干の気まずさを覚えて、すぐに目を逸らす。 そのまま歩き去ろうとすると、彼女が一歩前に出た。 急に目の前に出られて、慌てて歩を止める。わけのわからないまま彼女を見つめると、どうしてだか彼女の身に着けている栗色のマフラーに目がいってしまった。 どうにもそのマフラーは、どこかで見たことがあるような気がする。 続きを読む