転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515762648/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/12(金) 22:10:48.62 ID:QHT5/WDn0 すみません、前スレで終了の予定でしたが唐突に最終話を投下していきます (需要がないのは理解しているのですが、何となく最後まで書きたくなってしまいまして……) 高嶋友奈の章・第一話「出会い」:郡千景「結城友奈は勇者である」 高嶋友奈の章・第二話「心の平安」:高嶋友奈「結城ちゃんは勇者である」(前スレ) 高嶋友奈の章・第三話「純潔」:結城友奈「これは勇者たちの物語」(このスレ) 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/12(金) 22:13:46.49 ID:QHT5/WDno *大赦本部前 高嶋友奈「風先輩を止められるならこれくらい! だって私は勇者だから」 友奈(それはどこかで聞いた言葉で、結城ちゃんなら言っただろう台詞。……私は勇気ある人じゃないけど、この世界で二年を過ごした結城友奈であることにも間違いないから、自然とその言葉が出てきたのだと思う) 犬吠埼風「ゆう、な……」 友奈(『結城ちゃんは勇者である』で言うと確か九話の場面。風先輩の姿がとても心に刺さって、泣いてしまったことを辛うじて私は覚えている。あの場面と同じ光景の今、目の前で風先輩は私の名前を小さく呟いてくれた。そして──) 三ノ輪銀「……!」 三好夏凜「……ぁ……」 ギュッ 犬吠埼樹「……」 風「……いつき……」 友奈(樹ちゃんが風先輩の背中を抱きしめる。泣きそうな顔で、だけど泣いたりなんかしないで、強く強く、風先輩を抱きしめていた) 風「あ、あぁ……っ……ああぁ……ッ」 友奈(……風先輩は泣き崩れてしまったけれど……大丈夫。今はそばに樹ちゃんが居る) 風「……ごめん……ごめん、皆……」 友奈(私と夏凜ちゃんと銀ちゃんは、ただ静かに風先輩と樹ちゃんのやり取りを見つめている。樹ちゃんが風先輩にスマホの画面を見せているところだった) 樹『私達の戦いは終わったの。もうこれ以上、失うことはないから』 風「でも! 私が勇者部なんて作らなければ──!」 樹「……」フルフル 友奈(樹ちゃんはポケットから一枚の紙を、私たちが書いたあの時の寄せ書きを……取り出して、ペンを走らせる。……いつも大事に持っていてくれたんだね……) 樹『勇者部のみんなと出会わなかったら、きっと歌いたいって夢も持てなかった。勇者部に入って本当によかったよ』 友奈(……うん。そうだね、樹ちゃん) 友奈「風先輩、私も同じです。だから、勇者部を作らなければ、なんて言わないで下さい」 風「……っ……」 風「……あぁ……あぁぁあぁぁぁ……っ!」 友奈(風先輩の握った拳はどこにもぶつけられることはなくて、風先輩の全てを樹ちゃんの小さい身体が包み込み、決して離さないように抱きしめていた) 友奈(……確か九話のタイトルは"心の痛みが分かる人"でアマドコロの花言葉。今の樹ちゃんにこそ相応しい植物の名前、だったんだね……) 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/12(金) 22:18:21.76 ID:QHT5/WDno 友奈(泣き続ける風先輩を樹ちゃんがなぐさめ続けている。風先輩の優しさが起こしてしまった出来事だから悲しい光景だけど、それでも確かに、あたたかい時間はそこにあって──) 友奈(突然、目の前に私たちのスマホが現れた。緊急速報のような不快な異音が鳴り響く。見ると、この場に居る全員、夏凜ちゃんと銀ちゃんのスマホも同じ状態だった) 銀「特別警報発令……と言うことは──!?」 パァーッ 友奈("私が行かないと!"と思った時には、鮮やかな色が世界に広がり、私たちは樹海の中に居た。……風先輩を止めることはできた。なら、私が今行うべきことは──) 夏凜「──しっかりしなさい、私! 緊急事態だとしても、まずは状況確認よ。バーテックスの一体や二体私が──え……? なによ、これ……」 友奈(皆の居場所を示すいつものスマホの画面は、半分近くが真っ赤に染まっていて、その赤い点全てがバーテックスだと私は知っている。──東郷さんの名前は画面の一番端、私たちと最も離れた場所にあった) 友奈「東郷さん……!」ダッ 夏凜「待ちなさい! 友奈!」 友奈(いても立ってもいられず、私は駆け出していた。後ろに夏凜ちゃんの気配は感じていたけど振り返る余裕なんてなかった) 友奈(進み、大量のバーテックスが壁の穴から侵入してくる姿を目の当たりにする。アニメで見た時よりとは比べ物にならない、本能に訴えかけてくるような恐怖があった。心臓の中で冷たい感触だけが広がっていく。──でも、壁のそばには私が探していた人も確かに居て) 友奈「東郷さん! ──え……?」 友奈(アニメで見た覚えのある武器を構えた東郷さんの後ろ姿。そこからさらに奥、私のよく知る人が……壁の上で、東郷さんを見守るように立っていた) 友奈「ぐん、ちゃん……?」 友奈(勇者姿になったぐんちゃんが、何故か目の前に居て──今更ぐんちゃんの端末が私たちのスマホに表示されていないことに気付いてしまう──違う! 今はそんなことはどうでも良くて──!) 夏凜「何やっているのよ東郷! まさか千景もなの!?」 郡千景「……」 東郷美森「……見ての通りよ、夏凜ちゃん。壁を壊したのは、私よ」 夏凜「な……っ! 何を言っているのか、分かっているのあんた!?」 友奈(夏凜ちゃんはもう追い付いていて、夏凜ちゃんの言葉に東郷さんはアニメで聞いた覚えのある言葉を返している。でも、そんなやり取りすら満足に私の耳へは入って来なくて……ただ私は、ぐんちゃんに向かって) 友奈「ぐんちゃん……どうして、ここに居るの……?」 友奈(私の口から辛うじて出た問いに、ぐんちゃんが初めて目を合わせてくれる。いつものぐんちゃんの優しい瞳だった。だから安心してしまう。……だけど) 郡千景「……そうね、言葉にするなら物語の行く末を見届けるために、かしら。……私は東郷美森を止めることなく、こうして今も見過ごし続けている。言わば彼女の共犯者と言っても過言ではないのでしょうね」 友奈(……ぐんちゃんの言っていることが理解できない……したく、なかった) 続きを読む