夢のエネルギーであった原子力発電がその暴力性をむき出しにしたチェルノブイリ。その人類の負の遺産とも呼べる場所が、現代の夢のエネルギー太陽光発電のための場所に生まれ変わるというニュースです。 オススメ記事 【1月14日 AFP】1986年に世界最悪とされる原発事故が起きたウクライナのチェルノブイリ(Chernobyl)では、オレンジ色のベストを着た作業員がソーラーパネルを設置する作業に追われている。事故後に見捨てられたこの地を復活させるため、同国初の太陽光発電所を稼働させる準備を進めているのだ。 この太陽光発電所は、原発事故後に設置された原子炉を覆う「石棺」をさらに覆う新たな金属製シェルターからわずか数百メートル離れた場所にあり、出力は1メガワットが見込まれている。建設を進めているウクライナとドイツの合弁企業、ソーラー・チェルノブイリ(Solar Chernobyl)の関係者はAFPに対して「中規模の村、あるいは約2000棟の共同住宅の電力需要に対応できる」と説明した。 ソーラー・チェルノブイリによると、太陽光発電所は数週間内に稼働する予定。 これまでに100万ユーロ(約1億3500万円)の設備投資を実施し、サッカー場約2面分に相当する1.6ヘクタールの用地にソーラーパネル約3800枚を設置した。償却期間は7年と見込んでいる。最終的には太陽光による域内の発電量を、稼働開始時の100倍に引き上げる意向だとしている。 過去2年間ロシアからの天然ガス購入を停止しているウクライナは今後、農業ができなくなったチェルノブイリ原発周辺の無人地帯の可能性を太陽光発電などに活用する方針だ。 via: 原発事故のチェルノブイリにウクライナ初の太陽光発電所、数週間以内に稼働へ 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News チェルノブイリの新しい顔 これは素晴らしいニュースだと思います。人類の負の遺産はいくつかあります。ユダヤ人大虐殺の痕跡として存在するアウシュビッツ強制収容所、広島長崎の原発跡、そしてこのチェルノブイリです。夢のエネルギーと言われた原子力発電の強烈な負の側面を人類に示したこの地域は、人が住むことの出来ない不毛の地と化していました。 しかし、そんなチェルノブイリを有効活用するアイディアがいま実現したというのですからこれは感動です。しかも有効活用の中でも最も象徴的な再生可能エネルギーによる発電所だというのですからドラマだとしたら出来過ぎと言われても仕方ないくらいのことです。 日本、福島はこれからどうなる? 他の国だとそれで感動は終わりかもしれませんが、日本は少し事情が違うといえるでしょう。私達は福島という原子力発電所の府の側面が露出した地域を抱えているからです。あの大震災から随分経ちましたが、いまだに放射能におびえている方がいることも事実です。 チェルノブイリが事故から今回の大復活を迎えるまでに数十年が掛かっていますが、日本の福島はどうなるのでしょう。既に都市も随分整備されてはきたものの、仮設住宅での暮らしを続けている方もまだまだ多い中、あの大きな出来事を受け止めることで精一杯のようにも思います。 しかし、私は今回のチェルノブイリのニュースを見て、やはりこの辛い過去をどのように受け止め次世代へと繋いでいくかはいま生きている私達に掛かっていることを理解しました。負の遺産として目を逸らしたり、全く新しい何かを上から作って隠してしまうのではなく、その過去を昇華していく(決して忘れるということではない)。 日本にはいま、このチェルノブイリのニュースから学ぶことが少なくないのではないでしょうか。