転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501774497/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/04(金) 00:34:58.03 ID:5kKk3gfk0 「ねえねえ杏奈ちゃん。しようよぉ」 杏奈ちゃぁん、と口にしながら杏奈のほっぺに、自分のほっぺを押し付けてくる。すごいむにむに……する…………。なにより、暑い……。 ここは事務所なのに……百合子さん、大胆……。 助けを求めるように周りに目線を向けた。 紬さん……目をそらす。 エレナさん……『ファイトだヨっ』と言わんばかりのサムズアップ。 未来……急に自分の瞳を手で覆った。だけど、指の隙間から顔を真っ赤にしてこっちを見てる。未来、ばーか。 どうやら……助けはないみたい、だね…………。 「だめぇ? 杏奈ちゃん」 「駄目。百合子さん…………しつこい……」 そう言っても一向に離れてくれない百合子さんを、杏奈は強引に押しのけて立ち上がった。あぁん、と百合子さんが気持ち悪い声をあげる。 らちが明かない、帰ってしまおう。 背中に追いかけてくる百合子さんの声を受けながら、杏奈はこの騒動の発端を思い出していた。 始まりの一言。百合子さんの一言。 『杏奈ちゃん。キスの練習、しよう?』 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/04(金) 00:35:23.72 ID:5kKk3gfk0 『――――え?』 それはいつも通りの、夏の暑い日のこと。 直前まで、一緒にゲームをしてて……、休憩しようかって話になって一呼吸置いた時のこと…………。 最初、杏奈は何を言ってるのかわからなくて…………。だけど、落ち着いて、百合子さんの少し紅のさした頬を見て、やっと飲み込めたんだ……。 汗が噴き出して、暑さにも増して混乱して。 百合子さんも頭を暑さにやられたのかなって…………。 だから、聞き返そうとしたんだけど、 『百合子さん……何言って――』 『キス、ちゅーの練習っ。しよう?』 ずいっ、と顔を近づけてくる百合子さん。 目と目が合って、いつもの何倍もドキドキ……。 あんなこと言われたから、百合子さんの唇から目が離せない。光が跳ねて、艶めかしいツヤをまとうその唇。いつも見つめていたそれを、百合子さんが差し出している。 それも、しようと思えば一秒も待たずに触れるような距離。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/04(金) 00:36:17.27 ID:5kKk3gfk0 だけど……杏奈の体は、後ずさっていた。 理由は、分からない……。だけど、これが正しいと思ったから…………。 『杏奈ちゃん、嫌?』 すると、百合子さんの表情が少し残念そうなものに変わっていた。それを見ると、少し後悔しそうになる…………だけど、絶対に後悔しないから……。 百合子さんのその質問には答えないで、一方的に聞き返した。 『なんで、急にそんなこと……言うの…………?』 百合子さんは、控えめに言って猪突猛進。率直に言って、馬鹿…………そういうところに、救われるときもあるんだけどね……。 そんな百合子さんだけど、何も考えずに、自分のその、キスをしちゃう人じゃない……。だから、聞いてみたかった…………。 その必要が、あるって思うから。 『だ、だって!』 『だって……?』 続きを読む