瀧「22歳童貞です」三葉「25歳処女です」

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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/09/18(日) 03:18:48.42 ID:hIKyFdbm0
君の名は。のアフターSSです
ひたすらゲロ甘なんで、そういうのが苦手な人は注意


少しきつく締めていたネクタイを緩めながら、俺は逸る気持ちを抑えるように電車の窓から外の景色を眺めていた。
柔らかなオレンジ色に染まっていく街が見える。
ビルの群れの向こうに沈む夕陽のまぶしさ。
そして、まばたきの次の瞬間には夕陽が雲に隠れて、ただでさえ不確かで不条理な世界の境界が朧な形を作っていく。
光と影が混ざり合って、街の明かりと夜の闇と夕陽の光が不均等に混ざり合わさって、自分という存在さえ不確かになっていくような感覚。
こんな時間帯のことを何と呼んでいたっけ?
黄昏――誰そ彼――彼は誰……

瀧「いや、違う」

俺は無意識のうちに呟く。
カタワレ時だ。
『彼女』の住んでた地域に伝わる古い呼び名。
俺には聞き慣れない言葉のはずなのだが、この呼び名に不思議と違和感はなかった。
むしろ、ずっと昔から使っていたような、そんな――って、俺は何を言ってるんだ。
生まれてこのかた、旅行以外で東京を出たことがないってのに。
っていうか、何で俺、『彼女』の出身地のことなんて知ってんだっけ?
ふいに沸いた疑問が俺の頭の中をもたげる。
『彼女』と出会ったのは今朝がたのこと。
それもほんの少しだけ話して連絡先だけ交換してすぐに別れてしまったんだから、俺が彼女の出身地のことなんて知っているはずなんて――ないはずなのに。

瀧「これから会うんだよな」

スマフォを取り出し、画面に表示される『彼女』の連絡先を何度も何度も確認する。
もう、消えたり、忘れたりしないよな?
自分でもわけのわからない不安に駆られながら、俺は彼女に電話しようとして、結局やめる。
電車内での通話はマナー違反だ。
大体、夢じゃないんだから『彼女』の連絡先が消えたりするわけがないし、俺が『彼女』の名前を忘れたりするはずがない。

瀧「みつは……宮水三葉」

どこか懐かしい思いに浸りながら、『彼女』の名前を大事に大事に呟く。
うん、覚えてる。
忘れたりするわけがない。
もう絶対に忘れたりするもんか。
わけのわからない不安に駆られる自分が馬鹿らしくなり、俺は焦燥を打ち消すように首を振った。
これから俺は彼女と会うんだ。
そのための約束もした。
した……よな?
俺は不安になり、スマフォをいじる。

『突然、不躾ですが、今夜、大丈夫でしょうか?』

昼休み、『彼女』に送ったメールを確認。

『はい。待ち合わせは四ツ谷駅前に十九時でどうでしょう?』

『彼女』からの返信。
四ツ谷駅前。
そういえば五年前、それと何か月か前の先輩との待ち合わせの時も四ツ谷駅前だったな、なんてどうでも良いことを思い出しながら、俺は了承のメールを送った。
あと、もう少しで『彼女』とまた会える。
あの声を、空気を、温かさをまた感じられる。
『彼女』のことを思うだけで、いつの間にか胸の奥に空いていた空洞が満たされていくような感覚。
俺はずっと、『彼女』を、一人だけを探していた。



2: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/09/18(日) 03:19:44.23 ID:hIKyFdbm0
改札口を出て、駅前の広場へ小走りに向かう。
待ち合わせの時間は十九時。
今はまだ十八時四十分。
約束の時間まで二十分以上あるんだから、急ぐ必要なんてないのに俺は逸る気持ちを抑えられなかった。
いや、本当は会社にいるときもずっと心は『彼女』のもとへ向かおうとしていた。
なのにそうしなかったのは、ギリギリで俺を拾ってくれた会社への恩義からか、あるいは『彼女』がそんな無茶を望まないことを俺自身が知っていたからか。
そう。
俺の知っている『彼女』は――

いた。
まだ二十分前だってのに『彼女』はそこにいた。
どこか不安げな表情で俯きながら。
俺は『彼女』を見つけた瞬間、言葉にならない安堵で朝に続いてまた泣きそうになる。
これまでの人生で一日に二度も泣いたことがあっただろうか?
『彼女』とこうしてまた会えた奇蹟。
泣きたくなるほど、それが嬉しかった。
彼女がふいに顔を上げる。
その視線が俺を見つける。
次の瞬間、彼女の不安げな表情は安心したような、ほっとしたような表情へと変わる。
そうして、俺は気付く。
『彼女』も同じだったんだ。
ずっと探していた。
だれかひとりを、ひとりだけを。

瀧「えっと、遅れてすみません。待ちました?」

三葉「……い、いえ、今来たところです」

『彼女』は、三葉は顔を真っ赤にして手を振った。
すぐにわかる嘘だった。
この様子だと三十分以上、待っていたんじゃないだろうか?
もしかしたら約束の一時間前にはもうここにいたのかもしれない。
そのことに対して申し訳ない気分になったものの、同時に嬉しくもなる。
どうしてそんな気持ちになるのかわからないが、相変わらず変なところで律儀な性格なんだな、なんて思いながら俺は彼女に手を差し出す。

瀧「それでは行きましょうか」

三葉「えっと……」

彼女は俺の手に視線を向けたまま少し固まっていた。
その反応に俺は自分のやっていることの大胆さに気付く。
会ったばかりの女の人の手をさっそく握ろうなんて、どんだけ餓えてんだよ。
これじゃ完全なナンパ野郎じゃねえか。



3: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/09/18(日) 03:20:15.89 ID:hIKyFdbm0
瀧「す、すみません。そ、その、これはそういうつもりじゃなくて……」

しどろもどろになりながら俺が弁明していると、

三葉「はい、これでいいですか?」

彼女の柔らかな手が、引っ込めようとした俺の手を握っていた。
瞬間、心臓が早鐘を打つ。
彼女の存在を身近に感じられて、涙が出そうになる。
このまま精神がどこか別次元にトリップしそうな勢い。

三葉「あの、瀧く……立花さん、大丈夫ですか?」

彼女の怪訝そうな――俺のことを『立花』と呼ぶ声を聞いて正気に戻る。

瀧「え? あ、す、すみません」

さっきから謝ってばかりだな俺。
なんて思いながら、なんとなく寂しい気分になる。
彼女の口から『立花』なんて他人行儀な呼び方をされるなんて。
普通ならそれは当然のことで、そうしないことこそがおかしいはずなのに。

瀧「あの、俺から誘っといて何なんですけど、三葉……」

俺の言葉に彼女は一瞬、期待したような表情を浮かべ、

瀧「……宮水さんはイタリアンとか大丈夫ですか?」

とっさに言い直すと、落胆、そして何かを言いたそうな表情に変わった。
あれ?
俺、何か間違ったのか?
無意識のうちに彼女の名前を呼ぼうとして言い直しただけだ。
そりゃそうだろ。
出会ったばかりの相手の下の名前をいきなり呼ぶなんて、それが俺にとってどんなに自然なことに感じられても失礼すぎる。
だから、これは正しい判断のはず――本当に彼女と出会ったばかりなのか?
突如として、湧き上がる自問。
俺はずっと前から、ずっとずっと前から君を知っていたような――

三葉「立花さんにお任せします」

彼女の声に俺の思考は中断される。
俺が顔を上げると、彼女の顔に浮かんでいた落胆の表情は消えていた。

瀧「そ、それじゃあ、行きましょうか」

彼女の柔らかな手を握り、その暖かさに安堵しながら、けれど何かが違うと心のどこかで感じながら、俺たちはカタワレ時の終わった夜の街に向かった。




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