転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511023957/ 1: ◆8ozqV8dCI2 2017/11/19(日) 01:52:38.26 ID:QUXWsklw0 「貴女のせいよ」 夕日が射す教室で、彼女は言った。 「貴女のせいよ、棟方さん」 先ほどまで愛を囁いていた唇が、微笑に歪みながらあたしを責め立てる。 「私、女の子を好きになっちゃったわ。ほんの少し前まで、恋に恋してたっていうのにね」 「貴女に出会わなければ、普通に男の人に恋をしていたというのに」 「今では毎日貴女のことばかり考えているわ」 彼女は笑みを絶やさない。 もうすぐ欲しいものが手に入る、そう確信した顔だ。 「女の子が女の子を好きになるなんて気持ち悪い、なんて言わないわよね?私がこんなふうになったのは貴女のせいなんだから」 「嫌とは言わせないわよ」 2: ◆8ozqV8dCI2 2017/11/19(日) 01:53:25.12 ID:QUXWsklw0 彼女はあたしの右手を掴んで無理やり自身のお山に押しつけた。 普段あんなにも求めていた感触なのに、いつも通り柔らかくて温かいのに。 何故だろう、今すぐ手を離したくて仕方ない。 「好きなんでしょう。何度も触ってきたものね。これからはいつでもどこでも好きな時に揉んでいいのよ。だから」 私と付き合って。 そう囁いた唇は、迷うことなくあたしの唇へと迫る。 ぴしゃり、と乾いた音が教室に響いた。 あたしが彼女の頬を叩いた音だった。 訪れた長い静寂の後。 「……貴女のせいよ」 悲痛な声でそう呟いて、彼女は教室から去っていった。 アイドルになる前の中学一年のある秋の日。 あたし、棟方愛海は友達を一人失った。 3: ◆8ozqV8dCI2 2017/11/19(日) 01:55:13.04 ID:QUXWsklw0 「起きてくだしゃい、愛海ちゃん」 聞き慣れた声で目が覚める。 あたしは事務所の休憩室にあるソファーで眠っていた。 レッスンが終わった後に同じく今日レッスンのくるみちゃんを待っていたんだった。 「おはよう、くるみちゃん」 「おはようございましゅ。ごめんなしゃい待たせちゃって」 「寝てただけだから気にしないで」 そう言って体を起こすとくるみちゃんがあたしのコートを手渡してくれた。 「もう外真っ暗でしゅよ。帰りましょう」 最近はレッスンがあった日は毎日くるみちゃんと帰っている。 帰る準備をして外へ。 秋ももうすぐ終わる時期、夜は冷える。 「うなされてたけど夢を見てたんでしゅか?」 道中、くるみちゃんが聞いてきた。 あんな夢を見たせいか、やっぱりうなされてたらしい。 続きを読む