転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511173912/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 19:31:52.90 ID:dPfg/dp20 「皆は、もう行ったのかしら……」 「ああ……」 ここはもう僕と彼女の二人だけだ。 もうすぐ、彼女の長き旅路は終わる。 僕と歩んだ冒険の終わり。 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 19:33:07.91 ID:dPfg/dp20 「別に、二人きりじゃなくても良かったのだけれど?」 「ああ……」 これが最後の会話になるのに、いつもと変わらない返事を僕は返す。 思えば、彼女との会話はほとんどこれだけだった気がする。 もう何十年と付き添って来たのに、あれだけ多くのことを成して来たのに。 「二人きりなったところで、今更話すことなんてないのにね」 「ああ……」 本当は、もっと多くの言葉を交わしたいと……思っていたはずなんだが。 どうにも上手く喋ることが出来ない。 いつも通りと言えば、いつも通りなのだが、 ……まだ元気な僕が喋らないで、彼女にばかり喋らせるなどと言うのは気が引ける。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 19:34:07.69 ID:dPfg/dp20 「貴方はいっつもそればかり。肯定か否定かしかしないんだから……」 「ああ……」 「何が勇者よ。貴方は戦うことはしたけれど、連れて行ったのは私達じゃない」 「ああ……」 「まぁ、選んできたのは紛れも無く貴方だけれど。 ……どうしてこんなのと一緒になっちゃったのかしら……」 ……はて、どうしてだっただろうか。 正直、最後まで彼女と一緒に居たのは、成り行き上仕方のないことだった気がする。 僕達は勇者などと祭り上げられ、しかし最後には腫れ物のような扱いだった。 5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 19:35:39.29 ID:dPfg/dp20 それもそのはずだ。 かつて魔王などと呼ばれていた者を倒し、数々の強敵を打ち倒した。 世界の為に、平和の為に、僕達はそれぞれの想いを胸に戦い抜いた。 でも、残っていたのはそれを成した「力」という名の恐怖だけだったのだから。 ……僕だけの力ではなかったけれど。 仲間がいた。 いなくなった者と、仲間ではなくなった……決別した友もいた。 多くの悲しみと苦しみ、怒りや憎しみに振り回されて来た気もする。 全ては遠い過去の話だが、それは今でも僕と彼女の中で生き続けている。 「これで、良かったのかしらね……」 「ああ……」 続きを読む