マイノリティとは、私達が作り出す制度から漏れた人達である。そんな風に考えるなら、今まさに同性愛女性たちは法の網から漏れてしまっていると言わざるをえない。 オススメ記事 性別や性的指向に関係なく性暴力被害者を支援している団体「レイプクライシス・ネットワーク」には、他の機関で対応してもらえなかった人が多く相談を寄せる。年間150人ほどのうち、女性の同性愛者による相談は20人前後いる。 「女性同性愛者が集まる飲食店で知り合った女性にホテルに連れ込まれた」「友達募集のサイトで知り合った女性と会う約束をしたら、性行為を強要された」--。こうした被害を警察に訴えても「女性同士はレイプにならない」と言われた人もいる。「どうせ理解してもらえない」と諦め、心療内科で加害者を男と偽って相談する人も多いという。 相談員を務める40代の女性もかつて、心と体の性が異なるトランスジェンダーの元交際相手から性暴力を受けた。ドメスティックバイオレンス(DV)が原因で別れた後につきまとわれ、強引に家に上がり込まれて、指を使ってレイプされた。「殺されるかもしれない」との恐怖心で、声も出せなかった。自身や加害者の性的指向が分かってもらえないだろうと思うと、警察に足は向かなかった。 女性から女性の性暴力置き去り 刑法改正と女性同性愛者 今年刑法が改正されるということで注目を受けたのが性的暴力の部分。今まで男性同士の性的暴力が見過ごされてきたということが話題となり、結果として男性同性間の性暴力も刑法の対象として明記されるようになった。非常に喜ばしい結果であると同時に、その法改正の裏にまたしても取り残されてしまった人達がいる。 それが、女性同性愛者の人達。画像にもあるように、セクシャルマイノリティはそうでない人達と比べて性的暴力を受けやすいことがデータで明確に示されており、そのような被害を受けている人達にとって救いにならない法改正となったのは非常に残念だ。 一体なぜこのようなことが起きるのだろうか、と考えると答えは思いの外シンプルである。それは、声が小さいことだ。声が小さいというのは人数が少ないというだけでなく、組織的な行動が出来ていないためバラバラの声無き声としてだけ被害が語られるだけになってしまっているということ。 今回の刑法改正において男性間のものも取り扱われるようになったのは、なんといっても男性同性愛者やそのアライ(同性愛者ではないがその権利を守るべきだと考える人達)が組織として意見を統一し、法整備に関わるところにまで意見を提出しているからだ。 女性同性愛者はまだまだそのような組織化が進んでおらず、法改正に関わることができなかったので無視されてしまったのである。マイノリティというのは数の問題だけでなく、実際には政治的にどうやって力を持つことが出来るかというのが非常に重要なポイントなのだ。 なぜセクシャルマイノリティに性的暴力が多いのか これはあくまで推測だが、セクシャルマイノリティがなぜこんなにも性的暴力がヘテロセクシャル・異性愛者と比べて高いのかについては私見がある。それは、彼らがいわゆる普通の出会い方(学校が一緒、クラスが一緒、取引先の人、同僚など)ではなく出会い系サービスを使って会っていることに起因するのではないかと考える。 異性愛者であれば普段出会うだけでそこに恋愛関係が発生する可能性が少なくとも無くはないが、セクシャルマイノリティはそうではない。普段会う人達の中で相性の良い(お互いに性的に意識することのできる)人を見つけるのは至難の業である。なぜなら、お互いオープンでない場合がほとんどだからだ。 そうなると自然な出会いではないものの、事前にお互いの性的指向を共有した上で出会い系などで会う方が恋愛的に充実した人生を送るためには避けられない選択肢になってくるだろう。しかし、そのような出会いは本来であればありえない。お互いの性的指向を確かめたり(異性愛者間で、相手の性的な部分を会う前から知っていることなどそうはない)、顔や体の写真を見せあってから出会うのだから、どうしても性的な要素が強くなってしまう。 そのため、相手を人間として尊重するよりも普段は見つけることの出来ない性の対象として見てしまうために、性的暴力が起きやすくなってしまうのではないだろうか。決してセクシャルマイノリティが性的に暴力的だからなのではなく、普段隠さないといけないという構造的な問題がこのような被害を生んでいるような気がしてならない。 異性愛者間の出会い系における性的暴力のデータがあればより具体的に語れるのでまた見つけたら記事にしたい。