転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440698201/ 1 : ◆TDuorh6/aM 2015/08/28(金) 02:56:41.96 ID:ce9MZTcP0 ・これはモバマスssです ・地の文がかなり多いです ・2日以内に完結させます ・モバP「余命ドッキリ」の続きになりますが、読んでいなくても大丈夫かと思います 2 : ◆TDuorh6/aM 2015/08/28(金) 02:57:26.74 ID:ce9MZTcP0 ガヤガヤガヤ 沢山の人の間を、縫うように抜けて先へ進む。 行き交う人々に揉まれ、熱気にフラつく。 汗も酷いし、息も切れそう。 それでも、前へ。 抜け切ったら、文句を言わなきゃ。 身体が弱いっていつも言っているのに。 こんな人混みの中を引っ張り回すなんて。 さっきから頭がクラクラしている。 そんな事を考えながらも、心の何処で嬉しいと感じていた。 こんな風に、無理やり手を引いてくれる人なんていなかったな、と。 身体の弱かった私を心配するあまり、周りの人は必要以上に気を遣いすぎていて。 卑屈になり過ぎかもしれないけれど、皆私を対等に扱ってくれていないように感じていた。 自分だって分かっていた。 自分の体調、体質の事なんて自分自身が一番良く理解している。 そのせいで色んな人に迷惑を掛けてしまっていた事も。 そのせいで沢山の楽しみを逃してしまった事も。 そして今は、私だけでなく… ぶんぶんと頭を振り、暗い思考を叩き出す。 今はそんな事は考えてられない。 まずはなんとか無事にこの人混みを抜けて落ち着ける所へ。 その為にも。 繋いだ手を、更に強く握り締めた。 3 : ◆TDuorh6/aM 2015/08/28(金) 02:59:00.67 ID:ce9MZTcP0 八月も中旬。 熱気も更に増し、シャツの袖をこれでもかと捲り上げる無意味な行動の目立つ夏真っ盛り。 つい数週前まで、まだまだ寒いだの布団を仕舞うには早いだの言われていたのが嘘のよう。 昨晩の雨の湿気と相俟って、暑さは容赦無くビルを溶かそうとしている。 今日も今日とてセミは、飽きなど来ないと言う様に街を騒音で埋めていた。 まとわりつく様な夏の塊を駆け抜け、汗だくになりながらも涼しい涼しい事務所へ走っていたのは今日の午前。 アイドルとしてそこそこ売れ始めていた私は、変装用の帽子の暑さに恨みを向けつつ駅から猛ダッシュ。 そっちの方が目立つなんて考える程度の正常な思考力もこの熱気にやられていた。 まるでお城の様な事務所の自動ドアへ駆け込み、鬱陶しい暑さと一旦御別れ。 まるで先程とは別世界の様な冷たい空間にほっと一息。 周りの目を気にしつつ、シャツの胸元をパタパタと扇ぐ。 見れば私の後に入ってきたスーツ姿の男性や制服姿のアイドルも同じ事をしてして、少し笑ってしまう。 続きを読む