1 : 以下、名... - 2017/08/23 03:22:31.54 /e4K++fi0 1/8 感情から切り離した笑顔は得意だった。 「美味しいです。素材の味が生きていて、素敵ですね」 実際は単に薄味なだけだったけど、大人たちは笑っていたから自分も笑顔で合わせていた。 「奥村さんとこの娘さんはよくできていますなあ。うちのドラ息子とは大違いだ」 「父さんはいつもそう言うんだ」 ははは、と何が面白いのかわからない会話。ドラ息子は単なる謙遜であって、それが事実だとは思いもしていない親バカの言葉。 奥村春は、どんどん心が冷えていくのが自分でもわかっていた。 今時政略結婚だなんて。 くだらないと思う。だけど会社の経営のためだと言われれば仕方がなかった。 父がオクムラフーズをここまで再建するのに、どれほどの努力を、あるいは執念を燃やしていたか、自分は知っている。強引なやり方でたくさんの人が泣いてきたことも、身を以て知っている。 その犠牲の搾取としての富に浴してきた者としては、犠牲を無駄にするわけにはいかない。富は維持してこそ意味があるのだから。だから経営に必要ならば、奥村春には義務がある。 本当に、必要ですか? お父様。 「春」 「はい、お父様」 「式場の打ち合わせがある。お前は帰っていいぞ」 「でしたら僕が送りましょう」 「お前と春さんの披露宴だ、お前がいなくてどうする」 私の意思は必要ないのですね。 どうでもいいことだったから構いはしない。それよりは、この空間を早くに脱出できることの方がありがたかった。 父が、婚約者が、せせら笑った気がした。 元スレ 【ペルソナ5】春「美少女怪盗を名乗る前の話」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503426151/ 続きを読む