転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507899770/ 1 : ◆cgcCmk1QIM 2017/10/13(金) 22:02:51.20 ID:lLkXhtGF0 その夜、15歳の岡崎泰葉が望む事ははっきりしていた。 とにかく一刻も早くこの芸能関係者でごった返したパーティー会場を抜け出して、人目につかない暗い場所に行きたかったのだ。 そうしないと、感情を爆発させてしまいそうだったから。 『相変わらず可愛いね。あのころとちっとも変わらないな』 きっかけは、数年前お世話になったことのある大物監督さんのそんな言葉。 一瞬、息が詰まったような心地がした。 それはちっとも褒め言葉なんかじゃない。 それは『成長してない』という意味だった。 2 : ◆cgcCmk1QIM 2017/10/13(金) 22:03:16.99 ID:lLkXhtGF0 岡崎泰葉はプロだ。 プロの子役でモデルでもある。 演技力では人後に落ちぬと自負している。 求められるものに応えるため、常に努力を欠かさなかった。 ただ、それは子役としての話だ。 3 : ◆cgcCmk1QIM 2017/10/13(金) 22:03:45.14 ID:lLkXhtGF0 岡崎泰葉の体格は小柄だ。 中学一年生並み、といっても過言ではない。 身長は去年あたりから、全く伸びなくなっていた。 顔立ちは―――はっきり『幼い』と言って差し支えない。 まるで、大人たちが求め、もてはやした『子役の泰葉』のまま時が止まっているかのようで―――鏡を見るたび、悪い冗談のようだ、と泰葉は思う。 子役としての岡崎泰葉が求められる間は、それで差し支えない。 4 : ◆cgcCmk1QIM 2017/10/13(金) 22:04:11.59 ID:lLkXhtGF0 だが、岡崎泰葉は15歳だ。 役者はいつまでも子役でいられるわけじゃない。 ある程度の年齢になれば娘として、女性として―――新しい演技と魅力を開拓し、ステップアップしていかなくてはならないのだ。 娘役にステップアップしていくべき泰葉にとって、幼い容姿はハンデとなる。 容貌は変えようがない。 小手先のメイクでどうにかなる話でも無い。 別の武器が必要だった。 だが、泰葉の長い芸暦、経験の中に、ステップアップするための『武器』は存在していなかった。 泰葉の経験は、大人がそうあれと言った子役としての枠の中にあったからだ。 続きを読む