転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428818898/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/12(日) 15:08:18.79 ID:HxMRahMLo かぽーん。 お風呂と言えばこの音。 いつも思いますが、これって何の音なんでしょうか。 桶の音でオッケー? 「よ、っと」 手近な桶を手元に寄せて。 試しに一つ、鳴らしてみましょう。 かこーん。 「うーん……」 惜しいですね。 もうちょっとこう、間の抜けたような音を想像していたんですが。 いつの日か解明出来る日が来るのでしょうか。 「まぁ、何はともあれ」 せっかくの温泉旅館。 露天風呂に浸かりながら、目の前にあるお酒を呑まないなんて、罰当たりにも程があります。 「……ほぅ」 天国はここにあったんですね。 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/12(日) 15:17:08.37 ID:HxMRahMLo 「いーい湯っだーな♪」 2月という中途半端な時期だからでしょうか。 小さいとは言えとっても素敵な温泉旅館なのに、いま露天風呂は私一人の貸切状態です。 これは歌うしかありませんね。 「にーがつーは豆まきーで酒が飲めるぞー♪」 温かいお湯と、綺麗な星空と、美味しいお酒。 段々と気分がノッてきました。 高垣楓、温泉でオンステージです。 今なら即興で素敵な歌だって歌えそうです。 「――――♪」 何かを表現した訳ではありません。 ただ頭の中にぷかぷかと浮いてきた言葉をテキトーに繋げて声に出しているだけです。 時々鼻歌を交えて、二度と歌えない歌を歌います。 ――ばしゃんっ! ごてっ。 「……?」 隣の男湯から、立ち上がるような音と、滑って転んだような音。 ああ、てっきり貸切だと勘違いしてしまいました。ちょっとうるさかったかもしれません。 怒られるかな、と湯を隔てる竹垣に目を向けていると、竹垣の上からひょいと顔が覗きました。 もちろん男の人でした。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/12(日) 15:30:14.38 ID:HxMRahMLo 「――あの、すみません! アイドルになる気はありませんか!?」 「…………」 とりあえず、手近にあった桶を再び引き寄せて。 狙いを定めて、一二の三で投げ付けました。 かぽーん。 「……あ」 そうそう、こんな音。 手を打って頷くと。 ごつっと、頭を床へ打ち付けたような鈍い音が、続けて浴場に響き渡りました。 続きを読む