転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1505398643/ 1: ◆qnzB3T3fLO3s 2017/09/14(木) 23:17:24.12 ID:/ROXo52E0 アイドルマスターミリオンライブのSSです。 P視点、地の文が多いSSとなっております。 上記御了承の方は、是非。 2: ◆qnzB3T3fLO3s 2017/09/14(木) 23:18:06.55 ID:/ROXo52E0 「おはよう」 「おはようございます」 劇場の控室に行くと、沢山のモノに埋もれた最上静香がいた。 「挨拶も早々に悪いが、今日は私と一緒に営業へ出てもらう」 静香は一瞬はっとした表情になって、すぐにいつものすました顔に戻った。 「いえ、一昨日から聞いてましたから。すぐに準備しますね」 静香は机の上にあるモノを見つめた。熊のぬいぐるみ、柑橘系のアロマの入った瓶、文庫本、水玉模様の可愛らしい袋に入ったクッキー、『SHIZUKA MOGAMI』と青色の文字が入ったサイリウム、エトセトラ、エトセトラ。 「事務室へ持って行くといい。控室に置きっぱなしだと、なんだか放置したみたいで気が引けるだろ」 「すみません。そうさせてもらいます」 3: ◆qnzB3T3fLO3s 2017/09/14(木) 23:19:20.19 ID:/ROXo52E0 白い四ドア車の助手席に座る静香を横目で見る。 先ほどの可愛らしい袋に入ったクッキーを大事そうに口に運んでいる。 赤信号になったのを見計らって口を開こうとするが、すぐにまた青になってしまう。 タイミングというものに恵まれていない。 その代わりにラジオへ手を伸ばす。 『おはようございます! 九月十四日の朝、パーソナリティの天海春香です! 十四日! もう九月も半ばですね。それでもまだちょっと暑くて……あっ、でもコンビニのおでんを見ると秋だなーって思います。それでは、ラジオナムコモーニング、スタートです!』 「コンビニのおでんを見て秋。もっと夕日がきれいとか、羊雲が見えるとか。まぁ春香らしいといえばらしいな」 「そうですね」 「それにしても不思議じゃないか? 今朝直接クッキーをくれた相手が、こうしてなんともなしにつけた電波の先にいて、その声を聞きながら食べてるなんてさ」 「どうしてこれが春香さんからだって知ってるんですか?」 「当たり。まぁ、個性ってどこにでも出るもんだ」 4: ◆qnzB3T3fLO3s 2017/09/14(木) 23:20:22.40 ID:/ROXo52E0 「なんだ。予想ですか」 「予想というか、そういう感じがした」 「同じようなものじゃないですか。それに、私だって、その春香さんと同じ事務所に所属するアイドルなんです。不思議がってちゃダメなんですよ」 「それもそうだな」 信号で止まる。信号多き都市の移動は案外退屈でもない。むしろ有益である。 ひらけた海岸沿いを、アクセルを踏み込んで走らせるのも楽しいものだが、 こうしてノロノロ、青で動いては、赤で止まりを繰り返し、 外を歩く人間を見たり、どことなく聞こえてくる喧噪や音楽に耳を傾けてみたり、 ラジオの声を聞いたり、助手席や後ろに座る人間と話したり。 そういう忘れがちで貴重な、落ち着いた時間が強制的に作られる。 信号は、強制を以て忙しさから解放してくれる。 後ろの車が、じりじりともどかしそうに、距離を詰めてきた。 続きを読む