637: 大人の名無しさん 02/11/29 05:40 ID:AUE0fMst 就職して2年目のある日、営業から帰ってきた俺は先輩に呼ばれた。 「ちょっといいか?」 何だろう?仕事の話かな、なんて考えながら誰もいない営業場の隅に行った。 「財布の中に入ってた1万円がなくなったんだけど知らない?」 はぁ??何のことですか・・今帰ってきたとこなんですけど、どういうことですか? 財布をデスクに入れたままで営業に出た。帰ってきたら1万円少ない。 日頃からお金が無いと言っている俺が疑われたと言うわけだ。 冗談きついですよ、幾ら先輩でも洒落で済まないですよ、 何で盗られたと断言できるんっすか?おまけに何で俺なんですか! 確かに厨房の頃、流行の病気みたいに俺も文房具屋から消しゴムだのシャープだの、 果ては雑貨屋から何に使うわけでもないキムコなど万引きしてた時期があった。 罪の意識はあったんだろうが、仲間達と競い合うようにいろんなものを盗ってた。 しかし「お金」を盗ることはとてつもない悪事だと、何故かそれだけはどんなことが あっても手を出さなかった。自販機のお釣が多く出てきても、「誰かが俺を試してる」 そう思うと10円と言えども持って帰ることはしなかったし、お金が落ちていても 「隠れて誰かが見ている」、そんな気がして、拾わずに通り過ぎることにしてた。 今、俺は生まれて初めて「金を盗んだ」という疑いをかけられてる。それも、 同じ職場の先輩、自分が仕事を教わった先輩にだ・・・ その悔しさは未だかつて経験したことの無いものだった。わなわなと震えるのが 分った。ヒザも肩も、指先までも・・怒りと悔しさ、憤り、なんと表現すればいい? その場には奴と俺しかいなかった。その時点から、俺の中であいつは先輩でも何でもない クズ野郎に成り下がった。 殴りかかりたい衝動を押さえるのがやっとで、次の瞬間に同僚が同じ部屋に来なければ どうなっていたかは想像がつく。 続きを読む