転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486799319/ 1: ◆SbXzuGhlwpak 2017/02/11(土) 16:48:40.05 ID:u9Op5e3S0 ・アニメ基準 ・武内Pもの ・長い ・マジで長い ①私たちが知らない女性と、抱き合ったりしたことあるんでしょうか 「プロデューサー……付き合ってた人っている?」 それは脈絡の無い問いでした。 冬の夜は暮れるのが早い。 冷たい雨が降り注ぐ音と道路の喧騒が外で鳴り響く一方で、車内は長いこと静かでした。 そんな信号待ちの最中に、不意に静けさを破って助手席から今の質問が発せられたのです。 ひょっとすると彼女が今の今までずっと黙っていたのは、質問する機をうかがっていたからなのか。 驚きのあまり、ついまじまじと彼女――渋谷さんを見つめてしまう。 渋谷さんはシートに身を預け、私から顔をそむけるようにして頬杖をつき、窓の景色を眺めている。 質問する機をうかがっていたのではないかという推測が的外れに思えるほど、その姿は平静でした。 ――ふと、一年前のことを思い出してしまう。 あの時も車内で二人きりでした。 ただし彼女は渋谷さんとは違い、いつも以上によく話したかと思いきや突然黙り込み、それから突然同じ質問をしました。 私から顔をそむけ、しかし顔が真っ赤であることが耳まで染まっていたことからわかり―― 「プロデューサー」 「は、はい」 「信号、青だよ」 後ろからクラクションが鳴る。 どうやら思索にふけりすぎたようです。 慌てて足をブレーキからアクセルへと踏みかえます。 「その……私に付き合っていた人がいたかどうかですが」 「うん」 「大学生の頃に一度だけあります」 「……………………ふーん、そっか」 その声は異様なまでに平坦でした。 理由はわかりませんが、胃の辺りが締めつけられたような錯覚すら起きます。 チラリと助手席の様子を見るも、先ほどと何の変化も見受けられません。 ……サイドミラーからでも彼女の顔が見えないのは幸か不幸か。 渋谷凛 2: ◆SbXzuGhlwpak 2017/02/11(土) 16:49:39.48 ID:u9Op5e3S0 「どれぐらいの期間付き合ってたの?」 「一年と……半年ぐらいです」 「けっこう、長いね」 「え、ええ」 「それで、どちらから告白したの? 相手の人のどんなところが好きだったの? 今でも連絡取ってるの? なんで長続きしたの?」 平坦であった声が乱れ始め、熱がこもる。 年頃の少女だ。身近な異性のそういった話に興味を持つのは別に不自然な事じゃないのでしょう。 もっとも、渋谷さんの興味を持つ姿勢はやや不自然に思えますが…… 「相手の方から……になりますか」 「なんだか歯切れが悪いね」 歯切れが悪くならざるを得ない内容ですから。 酔って同僚に話すならともかく、女子高生に聞かせる話では―― 「妙に周りの人にお酒を勧められて潰れてしまって、目が覚めたら女性の部屋だったとか?」 「……ッ!?」 「なんとなくそんな光景が思い浮かんだんだけど……当たりみたいだね」 真相をあっさりと言い当てられ思わず息をのむ。 女の勘という言葉がありますが、それを目の当たりにする度に背筋が凍る思いをします。 まして、それがまだ十五歳の少女となれば言わずもがな。 「で、付き合わざるを得ない状況だったから付き合った。別に相手のことが好きだったわけじゃないってことだよね?」 「……いえ。好きか嫌いかで言えば好きだと断言できる程度には、好意を持っていました」 「……………………ふーん」 渋谷さんの声が跳ね上がったかと思うと、一瞬にしてまた平坦な声に戻ってしまいました。 好意を持つ者同士が結ばれる話は年頃の少女が好む類いだと思うのですが……わからないものです。 「ただ、彼女と付き合うことを願っていたわけではありません。私とはまるで違う視野を持っていることを尊敬していて、面白みの無い私に何かと話しかけてくれたことに感謝はしてい まして……良き友人を持てたと思っていました」 「プロデューサー……多分その人、色んな方法でプロデューサーにアプローチしたけどまるで気づいてもらえなかったら、周りの人に協力してもらって強引な手に出たんじゃないの?」 「はい。付き合い始めてから教えてもらいましたが……なぜ渋谷さんがそれを?」 「別に。プロデューサーは昔からプロデューサーなんだなって」 「は、はあ」 当然ですが大学生であった私はプロデューサーではありません。 346に入社して数年経ってからなのですが。 続きを読む