ヴィーネ「ガヴを犯したい」

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転載元 : http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499011757/

1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/07/03(月) 01:09:17.695 ID:z+3dqXID0.net
陳腐だけど、運命だと思った。
これまで私に友達が片手で収まるほどしかいなかったことも関係しているのだろう。

第一印象は、お人形さんみたいに可愛らしい女の子だった。
金色のロングストレートは柔らかな春風に煽られ、未踏の雪原を思わせる白い肌には染み一つない。
愛らしさを増長している小さい背丈が、くりんとした丸い目に似合っていた。

「実は……私もここに引っ越してきたばかりで友達がいなくて……」

彼女が天使であるということは、二重の意味でわかった。
鈴を転がしたような、いいや、そんなありきたりな表現には収まらない爽やかな流れを、その声は秘めていたと思う。

「それで、その……」

頬を赤らめた彼女は、少し伏し目になった。
砂金のような前髪に隠された菫色の瞳には、少し涙が浮かんでいる。
綺麗だ。何にも遮られることなく、そんな言葉が胸中に浮上した。

「わっ、私と友達になってくれませんか?」

「え、ええ。こちらこそ、喜んで!」

運命だと思った。

運命だと、思った。

思ったのに。

ちくしょう。


2: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/07/03(月) 01:09:27.486 ID:z+3dqXID0.net
ネットゲームを止めればよかったと、いつかの私は後悔していた。
インターネットの呪縛を受けたガヴは、瞬く間に駄目になっていった。
急転直下という四字熟語を生まれて初めて正しく扱えた瞬間だった。

液晶の向こう側にその瞳は繋ぎ止められた。
回線でしか繋がっていない、モニタ越しに笑っているのか泣いているのか喚いているのかさえ定かじゃない相手に。

どうにか入り込めないかと思案して、すぐに解決策を捻り出せた。

重度のネットゲーマーの常として、日々の生活がおろそかになっていくという傾向がある。
あの状態のガヴとはまだ一度しか会っていないが、
部屋にはプルタブの空いた缶コーヒーやら食べ終わった食器やらが散乱していたのは確認している。

だとすれば、例に漏れない確率は高い。

モシンナガンを構える死神か、はたまた敵が策に落ちるのを待つ軍師か。
ともかくそんな心境で、私はガヴの生活が立ち行かなくなるまで待つことにした。

結果は知っての通りだ。
久々に訪れたガヴリール宅は、腐海と見紛う様相を呈していた。

部屋を片付け、ご飯を作って、身の回りの世話をしてあげて、
私は彼女にとって欠かすことのできないポジションを確保することに成功したのである。
元から世話好きだったことが幸いしたのもあるかな。

ともかくそんな風にして、今の私たちが形成されていったわけだ。


3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/07/03(月) 01:09:38.494 ID:z+3dqXID0.net
勝って兜の緒を閉めよ、と先人は語った。私人じゃないけど。
かけがえのない立ち位置に在れても、私は策を練り続ける努力を怠らなかった。

どういう風にあの娘と距離を詰めればいいのだろう。
もっとお話しするにはどういう風にすればいいのだろう。

世に遍く学生が英単語や数式の暗記に用いる分の容量を、
私はガヴとの関係性について思考することに注ぎ込んだ。

それでも成績を落とさずにいられたのは、きっと魔界にいるときの経験に起因するのだろう。

私のような性質は、魔界の奇天烈な悪魔たちと比してみると少数派になってくる。

あくまで魔界の本流は胡桃沢一家のような演出を重んじる集団であり、
謹厳実直かつ品行方正に生きようとする私たちは亜流だったわけだ。

胡桃沢一家を例に挙げたが、誰でもサターニャのように優しいわけではない。
私はちょっとおかしい悪魔として、チリトリですくい切れなかった埃のように、魔界の隅っこに追いやられていた。

たまに折りを見てサターニャが話しかけてくれるけれど、
それ以外の大半は勉強か空想かに費やしていたのを覚えている。

そうして孤独を耐え抜いて育て上げた、考え過ぎるという習癖。
それは贅肉となって脳細胞に染み付いていたから、思考能力や持久力には自信があった。


4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/07/03(月) 01:09:47.817 ID:z+3dqXID0.net
そういった暗々裏の努力によって積み上げられた、私たちの日常。
黄金比とも言えるバランスで成り立った一年生の毎日は、私の一生のなかで最盛期と言っても過言ではなかっただろう。

私は無根拠に、こんな日々がずっと続くものかと思っていた。
大人になってもガヴリールは私の傍にいてくれるものだと、勝手に思い込んでいたのだ。

大切な友達。

大切な天使。

一生で、誰か大切なものを一つだけ挙げることができるのだったら、
私は迷いなく。



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