529: 大人の名無しさん 02/11/12 02:26 ID:AFEaQwRV 大学時代に、生まれて初めて、俺は人を好きになった。 中学時代も高校時代も、臆面もなく人前でいちゃつける人種に対して表面上は 舌打ちしつつも、内心ではそんなことができるその二人を、羨ましがっていた。女性 を見ても、ああ綺麗だなうんうん、そのぐらいにしか思わなかった。性欲はあること にはあったが、それが目の前にいる女性には何故か、繋がらなかった。面倒くさいと いうこともあったしなにより、怖かったのだと思う。 しかし彼女を一目見たときに、衝撃が起こった。全身の毛が逆立ち、しばらく思考 は停止し、ポカンとなって彼女のことを見つめる、という、後々になって思い出して みればマンガに出てきそうなほどの一目ぼれだった。 飲食店のバイトをしていた彼女に対して、俺は大学受験のときよりも、高校時代の バンドよりも、中学時代の文化祭のときよりも激しく、突進した。いまどきアメリカ のコメディにもないだろうってくらいは激しくだ。人生においてこんなに真剣になる のは、後にも先にも、これっきりだろうと思う。 オールナイトの映画を見に行った。フジロックに行って知覚の扉をノックしたり、 我がアホバンドのライブに来てくれたりもした。一緒に海に行ったことは多分、大往 生の際になっても思い出せば寿命が三年は延びるだろう。彼女の両親と冷や汗をかき つつ対面したり。幸せという感覚は、ひょっとしてこういうことをいうのかな、など と思ったりした。 今年の夏の終わりごろから、彼女の様子が変わってきた。最近元気がないな、とは思って いたが、彼女の部屋に行くと、異常なほど汚れていた。綺麗好きで、俺の部屋が汚れ ているのにも我慢ができなかった彼女の部屋が、まるで三年ほど掃除をしていない一 人暮らしの男の部屋のような様相になっていた。もともとは、東京に出てきて二年目 といった感じの普通の女子大生の部屋だったのだ。それでも、なんだか疲れてるん だろうな、ぐらいにしか思わなかった俺は、彼女の友人からの電話で腰の裏側から這 い登ってくるような、不安を感じずにはいられなかった。優秀そのもの、といった彼 女がここ二週間ほど、全く学校に姿をあらわさなくなったらしい。 続きを読む