【その7】 460: 好爺 02/12/05 00:04近江国のある屋敷で若い男達が集まり、世間話に花を咲かせ飲み食いに興じていた時、安義橋を無事に通った者がいないという噂話が話題にあがった。 するとある男が「評判の名馬を貸してもらえてればわけのない事だ」と言った。屋敷の殿様は、それを聞きつけると名馬を貸してくれた。 ところが広言した男はすっかり怖気づき、辞退しようとしたが他の者達は「いまさら見苦しいぞ」と言って実行を迫った。結局、広言した男はその名馬に乗り、出発して行った。 いよいよ安義橋に近づいてくると、なにやら恐ろしい気配が感じられて男は身がすくんだ。やがて陽が西の山に沈みかけてくる。人里離れた場所だけに、心細い事おびただしい。それでも男は、橋を渡り始めた。 橋の中ほどまでくると前方に何やら物影が見え、「鬼ががでたか」と思ってびくついた。しかし、それは苦しそうにうずくまっている女だった。 若くておだやかな女に見えたが、考えてみると、そのような女がこのような場所に一人でいるわけがない。男は「やぱっり鬼だ」と思い、急いで通りすぎようとした。 ところが、女は不意に声をかけてきたのである。 続きを読む