【その6】 410: 好爺 02/11/17 21:50京に住むある男が美濃か尾張へ行こうとして、夜更けに家を出た。 まだ京の町を歩いている時ある四辻で、青い衣を着た女官に出会った。彼女には供の者がおらず、一人で立っている。男は、こんな夜中に身分の高い女性が一人でいるわけがない、物の怪かもしれない、と早く通りすぎようとした。 するとその女官が「このあたりに、民部大夫の家があるはずなのですが、知りませんか」と聞いてきた。男はその家を知っていたものの、教えてよいかどうか迷ったものの、彼女があまりに思いつめた感じだったので、しぶしぶながらその女官をその家へ案内してやった。 彼女は喜び、自分の住んでいる所を告げると、門前で急に姿を消してしまった。男は、不審に思いながらも立ち去ろうとしたが、突然家の中から泣き騒ぐような声が聞こえてきた。 暫く家の様子をうかがっていたが、後は静かになって、何が起こったのかわからない。明け方になるのを待ってその家の者に事情を尋ねた。 続きを読む