875: 水先案名無い人 04/10/02 19:33:57 ID:Ls+jWx96 29 名前:名無しさん@生活サロン板できました[sage] 投稿日:04/10/02(土) 11:09:53 ID:JNUhd30B 幼稚園のころ、一人の男の子が「あそぼ」と言ってやってきた。 なぜかは知らぬが私がその子と遊ぶのを母が快く思っていないことは察していた。 母はその子が来たことに気付いてない。 あの子の名前を出すと、母が「いけません!」というに違いない、と私は思い、 子供の浅智恵でなんとか誤魔化して遊ぼうと考えた。 その子に「ちょっと待ってて」と言って、私は母に外で遊んでいいか訊ねた。 母は、「今日の分のピアノの練習してからね」と言った。 私は仕方なく練習した。急いで、急いで。急ぐとますます間違える。 窓からちらっと見ると、冷たい風の吹く中、その子は垣根のそとでじっと立っている。 やっと練習を終え、私はまた母に「外で遊んでいい?」と聞いた。 「寒いからダメ」と、母は言った。 どうしよう、あの子が待っている。「じゃあちょっとだけ外に行ってきてもいい?」 「…いいよ」。母は怒っているように見えた。 私は急いでその子のところに行った。 「今日は遊べないの」 その子は「そっか。じゃあね」と言って、鼻水を垂らして木枯らしの中を走っていった。 長いことまっててくれたのに、申し訳ないことをした、と子供の言葉で思った。 母が「あの子と遊ぶな」オーラを出してたのは、 幼稚園生なのにしょっちゅう骨折してたこととか、 寒い日に外で居場所をさがしていたこととか、 その辺に関係があったのかどうかは今となってはわからない。 あの日に戻れるなら 垣根のところで薄着で震えながら、でもニコニコして私を待っててくれたあの子に 「またせてゴメンネ」と言って、北風の中、一緒に遊びたい。 続きを読む