春は別れの季節であるとともに、新たなスタートのシーズン。海外では爆弾テロにもめげずに復活したサッカー選手もいれば、お払い箱になるラガーマンも。昨年、フランスの世界最高峰リーグに挑んだ五郎丸歩(31)。わずか1年で帰国することになった彼は、このまま散ってしまうのか。 *** ラグビー日本代表が南アフリカを相手に劇的な勝利を収めたのは、2015年のワールドカップでのこと。これを機に、キックの前に見せる独特の“ポーズ”も相まって、一躍、人気者となったのが、五郎丸だった。 スポーツ紙記者が言う。 「W杯の翌年、彼は所属するヤマハ発動機に籍を残したまま、本場、オーストラリアのチームに活動の場を広げました。さらにそれだけに留まらず、同年6月から、フランスのチームにヤマハを辞めて入団したのです」 ラグビーといえば、日本では豪州やニュージーランドのイメージが強いが、実はフランスでの人気は想像以上だ。 「五郎丸が所属したフランスの『TOP14』というプロリーグは、世界各国の代表が多くプレーし、世界一の呼び声が高いリーグです」 とは、自身も“花園”に出場した経験を持つ、スポーツライターの直江光信氏。 「彼の所属チーム『トゥーロン』は、サッカーで言えば『レアル・マドリード』です。集客力が高く、潤沢な資金で世界中のトップ選手をかき集める。フランスでは、ロングキックを多用した試合運びをするため、キックの上手い五郎丸に目が留まったのでしょう」 ■出場は5回だけ ヤマハ時代に約2000万円と言われた年俸は、世界最高額の約1億9000万円に。成績次第では2年目の契約も更新されるという好条件だったことからも、期待の度合いはうかがえる。だが、蓋を開けたら、世界の壁は高かった。 ラグビーマガジン編集長の田村一博氏の話。 「指揮官役はスタンドオフと呼ぶポジションですが、五郎丸のフルバック(FB)も、守備や反撃する際に素早く指示を出す必要があり、コミュニケーションが大事なポジションです。ところが、日本にいた頃に比べ、フランスでは明らかにボールをパスしてもらう機会が減っていました。選手とのコミュニケーションがとれなかったのかも知れません」 言葉の壁が立ちはだかったというわけだ。その結果、フランスでの出場試合数は、わずか5回。チームの会長からも「W杯の時の素晴らしさとは別人のよう」とまで言われ、今年6月での退団は決定的とされている。 今後は、古巣ヤマハに戻ると見られているが、 「日本代表になれるかは、まだわかりません。何しろ、1年半近くまともにプレーしておらず、試合勘を失っている可能性がある。さらに、日本代表のFBには、パワーで五郎丸に勝る松島幸太朗という若手も台頭してきていますから」(同) 日本代表の座が危ういとなれば、もう一つ。 「昨年、五郎丸は7社のCMに出演しました。1本当たり1500万円として、ざっと、1億円ほど稼いだわけですが、代表に漏れたとなると広告価値が薄れ、スポンサーが減るでしょう」(前出のスポーツ紙記者) W杯の日本開催まで2年。果たして返り咲くことは出来るのか。 週刊新潮 2017年4月27日号 掲載 https://www.dailyshincho.jp/article/2017/04290559/?all=1 続きを読む