転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493381354/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 21:09:14.38 ID:52+9rIDg0 アイドルマスターシンデレラガールズです。 一応、神谷奈緒のお話です。 森鴎外著の『高瀬舟』をモチーフにしております。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 21:09:51.38 ID:52+9rIDg0 ドアノブに手をかけ、大きく深呼吸。普段のあたしに見えるように。 どうせこんな事しても無駄なんだとは思う。だって聡いから。きっとあたしがこんな風に取り繕っているのも知ってるんだと思う。 でも、あたしはこれを止められない。あたし自身のためにも。 こうしないと、姿を見る勇気が出ない。 「ふぅ……。よしっ」 もう一度深呼吸をして気合を入れ直す。ドアノブにかけてた手に力を込めて、そーっとドアを開ける。 「よう。元気かー?」 普段のあたしを装って、いつもみたいに見えるように演技をしながら。 「んー。今日はちょっとマシ、かな」 ピッピッと規則正しい音を奏でる機械に繋がれ、呼吸器をつけられた加蓮がベッドの上には横たわっていた。 もう身体を起こすのすら辛いらしく、最近はずっと寝たきりになっている。 「そっかぁ。早く良くなるといいな」 ベッドの隣にパイプ椅子を立て腰掛けると、加蓮の顔が少し近くなる。 青白いなんてものじゃなくて、土気色をした加蓮の顔。 「そうだね……私も早く治して、また奈緒と凛と一緒にステージに立ちたいよ」 「……だな」 そんな答えしか返せないあたしが情けなくなる。 どうしてあたしはこんなにも何も出来ないのだろうか。どうして……。 っと、いけないいけない。また思考が堂々巡りをしてしまいそうだった。こんな事を考え始めるとつい顔が暗くなってしまうから、加蓮の前ではしないようにしてたのに。 「そうそう、今日はな――」 いつものように今日の出来事を加蓮に報告する。あたしが今日、見たもの、聞いたもの、触れたものを少しでも加蓮と共有したいから。 続きを読む