転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1492769540/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/04/21(金) 19:12:20.48 ID:dh2cKL/j0 アイドルマスターシンデレラガールズ、南条光のR-18SSです。苦手な方はご遠慮下さい。 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/04/21(金) 19:14:57.54 ID:dh2cKL/j0 担当アイドルの南条光が倒れたのは、およそ三十分前のことだ。 児童養護施設を兼ねたミッションスクール、その大聖堂にてLIVEを終えた直後、光は糸が切れたようにへたりこんでしまった。 顔は熟れた果物より赤く、呼吸は浅く、その憔悴ぶりは明らかに尋常のそれではない。 今になって思い返すと、光は今日のチャリティーLIVEに日頃以上の力を注いでいた。 〝正義のヒーロー〟という趣旨で活動してるから、子供の期待に応えるべく追い込みをかけていたのだろう。 アイドルのイメージを守ることに張り切りすぎる傾向は知っていたし、本人もそのことは理解していて、意識的に休憩を取るようにしていたのだが。 打てば響くように育つ彼女に絆され、俺は必要以上の自主練を許してしまっていた。 少年のように有り余る活力を目にして、より成長した姿が見たくなり――そう意欲に甘え、適度な休憩だけではケアしきれないほど疲労を蓄積させてしまった結果が、この現状だ。 バーンアウトに陥った原因は俺の判断にあるのだから、体調を取り戻せるように看病しないといけない。 肩で息する光を担ぎ、休める場所を探し出す。 大聖堂からしばらく離れた休憩室には、幸い先客は居なかった。 清潔なベッドに彼女を寝かし、冷汗シートや生理食塩水の買い出しに出かける。 道中で事務所への諸連絡を済ませ、赤いブローチを着けた修道女から部屋を借りたことの事後承諾を得た。 その他庶務も片付けて休憩室に戻り、ドアノブを握ると、部屋からくちゃくちゃと微かな音。 踏みとどまってドアに耳を当てると、苦しげな呻きがして焦燥を煽られる。 まさか、光の容態が悪化したのではないか――強い不安に駆られて、俺は部屋へと踏み入った。 「光、体調は大丈夫、……か……?」 「……えっ! あっ、ぷ、プロデューサー、もう、戻って……!?」 酷く動揺して応じた声は、間違いなく南条光のもの。 けれど眼前で佇んでいるのは、光であって光でなかった。 LIVE時のスマートな衣装に代わり、ランジェリーとボンテージが設けた不義の子を想起させる薄布が、滑らかな白肌を締め付けている。 両側頭部からはヤギを連想させる皺深い角が生えていて、ハート型の弧を頭頂に彩っていた。 露出した下腹にもまたハートの模様が彩られていて、デフォルメした子宮を連想させられる。 明らかに人から逸脱した装いは、古来より語られるサキュバスそのものだ。 愕然として凍り付いた彼女は、しなやかな細腕を引き締まった両脚の間に伸ばしている。 部屋に入る前にした水音、上気した頬、内側へ折り曲がったしなやかな指。 誰だろうと誰からも隠すことをしているのは、誰の目からも明らかだ。 最悪のミスを犯したと気付き、思考停止して立ち尽くす。 もっとも、一番最悪と思っているのは、俺より彼女の方だろう。 「……み、みっ、見ないで、見ないでくれっ! 何もっ、何も見ていない! そうだろっ!?」 矢継ぎ早に少女が羞恥を叫び、『あっちに行け』のジェスチャーを繰り返す。 突然の出来事に何も考えられなくなって、命じられるがまま踵を返した。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/04/21(金) 19:17:26.75 ID:dh2cKL/j0 しばし経ち、ようやく思考を取り戻した頃。 向こうも整理が付いたらしく、扉から手だけ出して呼び寄せてきた。 入室して謝意を表明してから、光に事情の説明を求める。 「光がサキュバス、……なぁ」 「コスプレじゃあないぞ。ほら」 真剣さが滲む声色と間逆に、光の矮躯が軽快に翻る。 腰まで伸びた黒髪をうなじが露出するまで掻き上げると、肩胛骨の肩胛骨の付け根ではコウモリ型の羽根がはためいていた。 尻の付け根には黒く細長い尻尾が生えていて、なめし皮のように照り返しながら、クネクネと縄跳びのようにしなっている。 示された証拠が事実を証明しているが、受容できるかという気持ちの問題は否だ。 かたや男を誑かして命を啜る、淫靡と頽廃の吸精魔。 かたや無垢かつ元気が取り柄な、夢にひたむきな南条光。 対極同然な両者を、どうしても等号で結べない。 戸惑って硬直する俺を眺め、光はわざとらしく頬を掻いた。 「本当は……ずっと、隠しておきたかったんだ。 けど、最近疲れちゃっててさ、限界を見誤ってたんだ。 いつもの格好が一番楽だったから、なっちゃってさぁ」 殊更に鷹揚な仕草を見せるのは、人を不安がらせたくない時にする悪癖。 それが不調や問題を隠す所作だということを、まったく知らない俺ではない。 「もしかして、教会に来るのが負担だったりしなかったか。 この場所には魔除けの効果があるから、とか」 いわゆる聖域といった場所には、退魔の加護というものがあるのだろう。 体に合わない場所で過ごせば体調は崩れてしまうもので、それはサキュバスとて変わりないはず。 その苦痛は人間に例えれば高山病に近いのだろうか、それとも、瘴気が立ちこめる山川を歩き回るようなものだろうか。 人の身にあっては想像もつかないが、尋常ならざる負荷であるとは推測できた。 「そんなところだな。聖堂の十字架から少し離れたから、もうほとんど辛くないけどね。 ……けど」 言い淀んだかと思えば目を伏せ、碧眼が俺を射竦める。 身を強ばらせた俺の方へ、光が一歩ずつ近づいてくる。 「もう、限界なんだ……見られちゃった以上、仕方ないし…… プロデューサー……ううん、プロデューサーさん。頼みがあるんだ……!」 距離が縮まっていくに比して、嫌な想像が胸中で膨らみゆく。 消耗を極めたサキュバスがにじり寄ってくる意味なんて、考えるまでもない。 命を保つために精が必須なら、人が食事を通して命を摘み取るのと同じように、自然の摂理として仕方ないのだろう。 しかし俺を補食しようとしているのは、性と縁遠かった南条光だ。 いや、そんな無垢じみた彼女像すら、もしかしたら芝居だったのだろうか。 俺の存じぬ所で男を貪り、浅ましく性に溺れていたのか。 確証無きはずの疑念が左胸を縛り、捩じ切られそうなほど痛みが走った。 「何を、手伝えばいいんだ」 神経をがりがりと削られて、声を裏返さないだけで精一杯。 固唾を飲んで彼女を見やると、じっと俺を見返してきた。 「……見張っていて欲しいんだ。 誰かを襲ってしまったりしないように、アタシを監視して欲しい!」 続きを読む