転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493129606/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 23:13:26.51 ID:diQk9yXt0 三作目なので初投稿です。 ※ちょっといやなお話です。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 23:13:56.18 ID:diQk9yXt0 Pちゃん、と諸星きらりが声を掛けてきたのは、夜の七時のことだった。 「なんだ、まだいたのか……早く帰りなさい。今日くらい、家でゆっくりすべきだろう」 「うん。でも、ちょっとだけ。お話くらいならいいでしょお?」 彼女がそう言うのも理解できないわけではなかった。名残惜しさは他ならぬ自分自身も持っていた。 言葉を交わしたいと望んでいたのは、彼女だけではなかったということだ。 「……分かった。でも、本当に早めに切り上げよう。明日にも差し支えるんだから」 「うんっ。ありがと、Pちゃん」 彼女は屈託なく笑った。少女時代と変わらぬ笑顔だった。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 23:14:38.65 ID:diQk9yXt0 「それで、何を話す? 今なら餞別に、どんな質問にも答えるけど」 「えっ、えっ、な、何にでも!?」 「そう。何にでも」 その気持ちは嘘じゃなかった。どうせ最後だからと、何か特別なものを与えたかったのだ。今まで何も与えられなかった分。 きらりはうーんうーんと唸りながら頭を悩ませていた。いきなりどんな質問でも、と言われても、急には思い浮かばないのかもしれない。 「うにににに……あっ! じ、じゃあアレ! Pちゃんのお給料!」 「24万8千円」 「え゛っ!? ……ほんと?」 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 23:15:25.94 ID:diQk9yXt0 「嘘」 「うそじゃーん!」 「質問に答えるとは言ったよ。でも本当のことを答えるとは言ってないからね」 そう言ったら、彼女はむぇーと唇を尖らせた。ちょっと意地悪だったかもしれない。 だけど真っ先に給料のことを聞かれても、真面目に答える気にはなれないのも事実だった。 「それが本当に聞きたいこと? きらりが話したいって言ってたのはそんなことだったの?」 「……ううん。きらりがしたいのは……もっと普通の、なんでもない……思い出話だよ」 「なら、思い出話を始めようか」 そうして、僕らは昔語りを始める。 続きを読む