転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492955780/ 1: ◆hxGgtPv0f. 2017/04/23(日) 22:56:20.96 ID:aCH1+UBJo 学校の帰りのバスの中で、ふとこの言葉を思い立って以来、言ってみたくてたまらなくなった。 善子(思い立ったが吉日) そう思って一人でニヨニヨとしていると、隣の席に座っていた曜さんが私を訝しむように見つめてきた。 曜「どうしたの善子ちゃん、エッチなことでも考えてるの?」 善子「善子じゃなくて、ヨハネですよう!」 いつもの調子で軽口をたたいたあとで、ふと気がついた。 私がこのように訂正するということは、私は自分のことをヨハネであると自認しているわけだ。 してみると、「冗談は善子ちゃん」と言うことによって、私は自分を自己同一化しているところのヨハネを自己否定することによって自己矛盾に陥り自分を見失ってしまうわけだ。 アイデンティティの崩壊。 どこかのライトノベルで見たことのある言い回しが思い浮かび、私はガタガタと震えだした。 2: ◆hxGgtPv0f. 2017/04/23(日) 22:57:36.19 ID:aCH1+UBJo 曜「どうしたの善子ちゃん、こんどはガタガタ震えだして」 善子「善子じゃなくてヨハ……うわあああ」 よくゲームで見たことがある。 アイデンティティが崩壊したラスボスは、急に旗色が悪くなって、主人公にすぐ負けたりするのだ。 きっと今頃、私のHPとMPもガンガン減りだして、隣にいる主人公気質のリア充に一刀両断ヨーソローされるに相違あるまい。 曜「どこか具合でも悪いの?」 善子「いやまさかそんなことはあるめえ」 3: ◆hxGgtPv0f. 2017/04/23(日) 22:58:04.74 ID:aCH1+UBJo 混乱する私の様子を見ながら、曜さんが、いたずらっぽく笑って言った。 曜「オバケでも見たのかな?」 善子「冗談は……」 【脳内会議】 善子(チャンスよ善子、「冗談は善子ちゃん」って言うのよ、今!) ヨハネ(いけません、あなたはヨハネなのです。気を確かに持ちなさい) 【脳内会議おわり】 善子「冗談は……いけませぬ」 【脳内会議】 善子(あーあ、せっかくの機会だったのにな) ヨハネ(結局、テンパってわけのわからないことを口走ってしまいましたね) 【脳内会議おわり】 曜「あはは、「いけませぬ」って! 善子ちゃんは面白いなあ!」 リア充ヨーソロー先輩は、そんな私の葛藤は知る由もなく朗らかに笑っている。 知る由も善子ちゃんである。 【脳内会議】 ヨハネ(それもこれもみんな精霊結界の損壊のせいよ) 善子(冗談は善子ちゃん) 【脳内会議おわり】 4: ◆hxGgtPv0f. 2017/04/23(日) 22:58:31.71 ID:aCH1+UBJo ああ、この悩みを誰に話せばよいものか。 そうだ、隣に座っている曜さんに相談してみようかな。 アホみたいに笑ってはいるが、何といっても年上なのだ。まさかモノホンのアホではあるまい。 善子「ねえ曜さん、アイデンティティって」 曜「ん、早口言葉?」 【脳内会議】 善子(ダメだこりゃ) ヨハネ(リアルを充実させる引き換えにアタマを空虚にしたのですね) 【脳内会議おわり】 しかしそうは言ってもさすがは先輩、心配そうに私を見つめてきた。 曜「うーん、難しいことはよくわからないけど、何やら深刻そうだね」 続きを読む