転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487599505/ 1 : ◆TOYOUsnVr. 2017/02/20(月) 23:05:05.98 ID:G5GC7UEv0 ダンスが好きで好きで仕方なくて、どうしても続けていたかった。 そういうアタシの気持ちに反して、アタシが本気で踊ることができる世界はどんどん狭くなる。 アタシの本気を受け入れてくれる場所はなくなっていく。 それでも、ダンスだけはやめたくなかったから諦めずに踊っていた。 そんなあるとき、道を示してくれた人がいる。 アタシが踊り続けられる場所をくれた人がいる。 きっと、そのときからアタシが踊る理由は一つ増えた。 2 : ◆TOYOUsnVr. 2017/02/20(月) 23:06:24.16 ID:G5GC7UEv0 ◆ ◇ ◆ ◇ 高校の頃に始めてから、ずっと手放せなかったものがある。 中途半端に握りしめ続けてしまったものがある。 本気で踊りたい、と願いはするものの、それができる場所を本気で探すことはしなかったアタシ。 プロデューサーさんはそんなアタシを見つけてくれた。 真っ暗で何も見えないし、ごつごつしてて歩きにくいんだけど、歩むべき道を教えてくれた。 なら、全力で応えるのが筋だよね。 そう思って、レッスンに明け暮れる日々だ。 プロデューサーさんは、いつもレッスンの終わりになるとちょこっとだけ顔を出してくれる。 もちろん、事務所に行けば会えるんだろうけど、お仕事の邪魔になっちゃうだろうから、それはしない。 レッスンは、アタシの好きなダンスだけじゃなくて歌とか演技とか、そういうのもたくさんある。 まぁ、アイドルなんだし当たり前と言えば当たり前か。 他のレッスンが嫌ってわけじゃないけど、やっぱりダンスが好きだから、ダンスレッスンの時は胸が躍る。 そして、今日は一日フルでダンスレッスンの日なんだ。 朝から楽しみで楽しみで、わんこに餌をあげて散歩に行って時間まで家で暇を潰してようかと思ったんだけど、そわそわしちゃっていつも より1時間くらい早く家を出た。 まだトレーナーさんもいないだろうに。 大人なのに、浮かれちゃって恥ずかしいなぁ。 自分で自分がおかしかった。 3 : ◆TOYOUsnVr. 2017/02/20(月) 23:07:24.20 ID:G5GC7UEv0 * レッスンスタジオに着くと、自分の予約が入っているルームを確認する。 よんまるさん……四階かぁ。 よーし、階段で行っちゃおう。 とん、とん、とん、と階段を駆け上がり程無くして4階に到着する。 体力がかなり戻ってきてるのを、ちょっと実感して軽くガッツポーズ。 廊下をてくてくと進み、四○三の部屋に入った。 「あれ、水木さん早いね。おはよう」 アタシが部屋に入ると同時に、いつもレッスン終わりに聞く優しい声がした。 プロデューサーさんだ。 「あれ? プロデューサーさん?」 「驚いたかな。今日はちょっとトレーナーさんに水木さんのレッスンで相談があってね」 「アタシの? え、アタシ何か問題あったの?」 「んーん。逆、やっぱりダンスはすごいんだね。水木さん」 逆、ってどういうことだろ。 問題なし、ってことなのかな。 ということは、褒められてる? だとすると、なんで? 「え。え? どういうこと?」 にこにこ顔でアタシにそう言うプロデューサーさんと、その隣で微笑むトレーナーさん。 なんだかアタシだけ置いてけぼりだ。 「えー、っとね。詳しくは言えないんだけど、水木さんに課題をお願いしようかと思って」 「……課題?」 「うん。それで、その課題が水木さんにできそうかどうかをトレーナーさんと相談してたんだ」 「トレーナーさんは何と……?」 「水木さん次第、だって」 「なるほど……」 「それじゃあ、トレーナーさん。お願いします」 そう言うとプロデューサーさんはトレーナーさんにぺこり、と頭を下げて出て行ってしまった。 4 : ◆TOYOUsnVr. 2017/02/20(月) 23:07:50.46 ID:G5GC7UEv0 * 説明されたものの、何が何やら分からず、呆然としているとトレーナーさんがぱちん、と手を叩いた。 「じゃあ、水木さん。今日も頑張りましょうか!」 はい。と返事をして、いつも通りアップを始める。 そのアップの最中にトレーナーさんが今日のレッスン内容を話してくれた。 なんでも、プロデューサーさんが持ってきた課題は、3曲。 これを今日と明日で完璧に踊れるようにして欲しいんだとか。 無茶苦茶言うよね、全く。 トレーナーさんは選ぶ権利はアタシにあるって言うし、いつも通りトレーナーさんが組んだレッスンメニューでもいいよ、とも言う。 さぁ、どうしたものか。 なーんて、考える必要ないよね。 プロデューサーさんがくれた課題だし、応えなきゃ恰好がつかないもん。 「やる。やります!」 こうして、鬼のようなレッスンが幕を開けた。 続きを読む