転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1484312847/ 1: ◆agif0ROmyg 2017/01/13(金) 22:07:27.78 ID:m+LHJ2JO0 アイドルマスターシンデレラガールズの、高垣楓のR18SSです。 「プロデューサーさん。今夜、一緒にお酒を飲みませんか」 担当アイドルからの誘いでさえなければ、断る理由なんて1つたりとも無い。 しかしながら、高垣楓担当Pがこの誘いに考えなしに乗る訳にはいかない……言うまでもない、当然だ。 それをわかった上であえて誘ってきているのか、それとも本当に飲むのが好きで好きで仕方ないのか。 長いことずっと仕事してきてもなお、今ひとつ判別しにくいのが、楓さんの厄介なところである。 「今日はもう、お仕事あんまり残ってないんでしょう? 先日、良いお酒を手に入れたんです。 うちで一緒に飲みましょうよ。一升瓶からおちょこに注いで……ふふっ」 さりげなくダジャレを混ぜ込んでくる辺り、機嫌は良さそうだが。 しかし、だからといって簡単に引き下がることはないだろう。 楓さんがアイドルとして活躍し始めて、もう結構長い。 我が事務所に所属するものたちの中でも人気はトップクラスであり、まさに絶頂期と言えよう。 仕事が増えれば当然の帰結として休みは減り、2人で過ごす時間も、もうずいぶん取れていない。 一人酒を余り好まない楓さんからのお誘いも、激化の一途を辿っていた。 2: ◆agif0ROmyg 2017/01/13(金) 22:09:03.34 ID:m+LHJ2JO0 「楓さん。誘っていただけるのは嬉しいんですよ。 でもね、今まで散々言ったとおり、Pとアイドルが二人きりでい過ぎるのは良くないんです」 ふわりとして柔らかく、それでいてつややかな髪。 大きくて澄んでいて、宝石のように輝くヘテロクロミア。 元モデルらしい、細く引き締まった長身。 余分な脂肪がほとんど無い、スレンダーな肢体。 どこをとっても高垣楓の身体には非の打ち所が無く、独特の神秘的な雰囲気もあいまって、彼女をよく知らない人間からは近づきがたく思われることもある。 実際には、言葉遊びと飲酒を好む庶民的な面もあるのだが。 そういう一面を見せられる人間は、アイドルになる前までは余りいなかったのだろうか。 こうして、親しい者と一緒にいたがることも少なくない。 そんな彼女と共に過ごす時間を余り確保できていないのは、確かに申し訳ないのだが。 「誰かと飲みたいのはわかりますけど、お互いのために我慢してください。仕事がしにくくなったらどうします」 「その分、アイドル高垣楓が稼げばいいじゃないですか」 「何を馬鹿な。その、稼ぐための仕事が……」 「飲んでくれないというなら一人で飲みますよ。どこか外で、知らない人ばっかりのところで」 勘弁してくれ。 高垣楓がその辺の飲み屋で1人で杯を傾けてたら、きっと大騒ぎだ。 酔うと意外と抑制の効きにくい楓さんが、ファンと絡むくらいならまだしも、万が一犯罪にでも巻き込まれたら。 許す訳にはいかない。 「そんなの駄目です、危険すぎますよ……2人で飲むなら、どこかの飲み屋かバーでもいいでしょう」 「終電の時間なんかに振り回されず飲みたいんです。 それに、アイドルが男と2人で飲むってのも、これはこれでバレたらまずいんじゃないんですか?」 まったくもってその通り。 変装や防諜など、普段から気を使ってはいるが。 それでも秘密というのは、どうしたって漏れるものだ。 バーで二人でいるところを撮影される危険を0にはできない。 楓さんには、誰か女性の、例えばアイドル仲間とでも飲んでもらうのがベストではあるのだが。 彼女の独特のペースに好んで付いていきたがる人は多くない。 そもそも我が事務所には、楓さんと同年代のアイドルが少ない。 「ねえ、いいじゃないですか。前にも何度か来たこと、あるでしょう?」 「大きな声で言わないでくださいよ、そういうこと。送り迎えしただけじゃないですか」 「ふふっ、そうでした」 そんなこんなで押し問答をして、結局根負けして、その夜の家飲みを承諾させられてしまった。 今から思えば、女性が、高垣楓がああまでして俺を誘ってきたことに、何かしら感じてもよかったかもしれない。 しかし、大人しそうに見えて自分の感性に正直な楓さんにちょっと振り回され気味なことに、俺は慣れ過ぎていた。 帰宅の準備を始めた俺を見る彼女の余りに明るい笑顔を見てしまって、裏を探ろうなんて思えなかったのだ。 3: ◆agif0ROmyg 2017/01/13(金) 22:09:52.27 ID:m+LHJ2JO0 そして、人目を避けながら二人して帰宅。 事務所を出る時間をずらし、人通りの少ないところで合流して、楓さんの部屋に入ってやっと一息ついた。 別々に入室したほうが安全だったのは間違いないのだが、少しは一緒に歩きたいと言って聞かなかったのだ。 でも、まあ。 安全云々言うなら、こうして男女が二人きりで、部屋にこもって酒を飲んでいる時点で、今更である。 なんだか段々やけっぱちな感覚。 嬉しそうに酒瓶を引っ張り出す楓さんを見ていると、なるようになれ、そんな社会人らしからぬ感覚に支配される。 「こっちが芋焼酎で、こっちのが麦…… 逆だったかしら?」 「飲んだこと無いんですか」 「忙しい忙しいっていって、なかなか私に付き合ってくれない、冷たい男性のせいですよ」 ひどい言われようだ。 俺はただ職務に忠実なだけなのに。 揶揄するようなことを言いながらも頬の緩みを押さえきれていない楓さんが可愛いから、別に構わないが。 綺麗なグラスに水割りを注いでもらって、ささやかに乾杯することにした。 「あら……これ、美味しいですね」 「……本当だ。スッキリしてて、ほのかな香りがあって。いいですねこれ」 「どうです。来て良かったでしょう? 他のことはともかく、お酒に関しては信頼してもらっていいんですからね」 トップクラスのアイドルとは思えないセリフだが、こんなに旨い酒を飲まされては憎まれ口など叩けない。 久しぶりの飲み会ということもあり、しばらく2人で盛り上がった。 続きを読む